2024年1号「技能と技術」誌315号
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職業能力開発総合大学校 職業訓練コーディネートユニット 原 圭吾皆さま,こんにちは。今回でシリーズの最終回となりました。これまでの講義はいかがでしたでしょうか。今回は,企業にとって重要な「カネ」についてお話しします。普段,仕事のスキルを指導している職業訓練指導員の皆さまにとって「カネ」という視点は,なかなか理解しにくいものだと思います。またこれまで学ぶ機会があまりなかった方も多いと思います。しかし企業にとって「カネ」は,ビジネスを継続するための生命線です。「カネ」がうまく循環することで,「ヒト」を育てたり,「モノ」を購入したり,生み出したりすることができます。今回は,職業訓練指導員の皆さまが企業の支援や訓練生の就職指導等をするために,最低限知っておきたい「損益計算書」,「貸借対照表」,「損益分岐点」の3つを取り上げ,その仕組みや意味を学びたいと思います。これらの財務データは,企業の経営状況を把握するために必要不可欠なものです。しかし,初めて学ぶ方にとっては,難解な専門用語が多く,理解するのが難しいかもしれません。そこで,今回は,できるだけわかりやすく,簡潔に説明していきます。「カネ」は企業にとって重要な経営資源の一つであり,企業が経営目的を達成するために必要不可欠-20-なものです。経営資源としての「カネ」は,企業の資本としての観点からアプローチされます。企業が利益を上げるためには,資本を投入する必要があります。このために,企業は「カネ」を調達し,経営活動を行っています。また,企業が持続的な成長を遂げるためには,資金計画を立て,資金を効率的に活用することが必要です。したがって職業訓練指導員の皆さまにとって,企業の財務状況の見方を理解することは,事業主支援や就職支援などにおいて,有益な情報を得ることができるものと言えます。はじめに「損益計算書」について簡単に説明します。「損益計算書」とは,企業が一定期間内に得た収益と支出を比較した財務諸表の一つで,企業がどれだけもうけたか,あるいは損失を出したかを示すものです。損益計算書を見ることで,企業の収益性や経営状況を把握することができます。損益計算書を模式的に示したものが,図1です。図1に示すように,損益計算書は,以下の6つの利益で成り立っています。① 売上総利益:売上高から原価を引いた利益です。② 営業利益:営業活動で得た利益であり,企業本来の事業活動で得た利益です。③ 経常利益:本来の事業活動以外でかかった費用を含めた利益です。④ 税引前利益:臨時的に発生した費用を含めた利益です。1.はじめに2.企業と「カネ」の関係3.損益計算書とは「ヒト・モノ・カネ」の基礎と実践講義3「カネ」についての重要性職業訓練指導員のための

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