2022年3号「技能と技術」誌309号
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<参考文献>たりするなどの理由により接地が取れない場合に用いられる方法で,大地と平行に電線を張り,その大地間静電容量を介して大地と電気的に接続されることを期待したものである。ただし,筆者らの実験では,あまり有効な効果は確認できなかった。実際に作製した接地極を図13に示す。このように湿った地面に30~60cm程度の穴を掘り,そこに細かく砕いた木炭を敷き詰め,その上に電線をハンダ付けした銅板を配置した。さらにその上に砕いた木炭をかぶせ,最後に土を埋め戻して,その上から十分に水をまくことで,接地極として使用できるようになる。制作したコイル,コンデンサ,鉱石検波器等を組み合わせ,図1に示す回路図に従って,実際にラジオ受信機を制作した。制作した鉱石ラジオ受信機を図14および図15に示す。選局は,正面パネルに取り付けられたバーニヤダイヤルによってバリコンの可動板を動かすことによって行う。受話器としては,放送開始当時はハイインピーダンスのマグネチックヘッドホンなどが使用されたようだが,現在では入手困難であるため,セラミックイヤホンで代用した。実際に本校(千葉県千葉市中央区)にて聴取した結果,594kHzのNHK第一放送(JOAK)が良好に受信できることが確認できた。また,天候が良く,アンプやブースタを用いた場合には,639kHzのNHK第二放送(JOAB),810kHzのAFN東京放送局も混信はあるものの感受することができた。本稿では,AMラジオ放送の歴史を調査して,さぐり式鉱石ラジオを再現した。ラジオを構成するコンデンサ・コイル・鉱石検波器を試作し,それらを構成要素として放送開始当時のラジオ受信機を再現した。本機によりAM放送を受信したところ,NHK第一放送が良好に感受できた。今後は,鉱石検波器の安定度を向上させ,より安-33-(1) 岡部匡伸:「ラジオの技術・産業の百年史 大衆メディアの誕生と変遷」,勉誠出版,2021(2) NHK放送文化研究所編:「20世紀放送史 資料編」,NHK出版,2003(3) 五十嵐智彦,佐藤玲子,加藤鈴乃,川口航大,岡田愁翔:「鉱石ラジオ教材の制作 その2~AMラジオ放送開始100周年に際して~」,技能と技術,2022年2号,2022(4) アーティスト小林健二の道具や技法:「ヴァリオメーターの製作について」,http://ipsylon.jp/2016/05/02/crystal-set-parts2-2/(令和4年4月4日閲覧)(5) アーティスト小林健二の道具や技法:「ヴァリオカップラーの製作について」,http://ipsylon.jp/2016/05/03/crystal-set-parts3/(令和4年4月4日閲覧)(6) 濱地常康:「真空管式無線電話の實験」,誠文堂,大正13(7) 小林健二:「ぼくらの鉱石ラジオ」,筑摩書房,1997(8) 原田三夫:「高級ラヂオの製作と原理」,誠文堂,大正15(9) 松平道夫,酒井忠毅:「ラヂオの實地製作法」,文陽堂,大正15(10) 門岡早雄:「放送無線聽取機組立の標準」,財団法人科學知識普及の會,1925(11) 奥中恒一:「實用無線電話の解説」,弘文社,大正14(12) 財団法人電気通信振興会:「入門 アンテナおよび電波の伝わり方」,財団法人電気通信振興会,平成19(13) 原田三夫:「誰にもわかるラヂオの製作と原理」,誠文堂,大正14(14) ポリテクカレッジ千葉:「鉱石で半波整流回路作ってみた」, https://www.youtube.com/watch?v=wVEdUy0B_eU&t=88s定した受信が可能となるよう検討したい。また,本制作の取組結果の一部を動画としてまとめ,電気学会が主催する「パワエレ動画コンテスト2021」に投稿したところ,最優秀賞を受賞した(14)。ご協力いただいた関係各位にお礼申し上げたい。8.制作したラジオ受信機9.まとめ

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