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図9 職業訓練における法的な関係図10 林野庁高知営林局事件(最高裁平成2年4月20日判決)衛法第122条に書かれている。勿論,関係した管理者や関係者は,企業の就業規則や社内規定で罰せられることにもなると思われる。やはり現場にトップが係わりトップが安全衛生管理の最高の実行者でなければならないと考えられる。5.3 事故・災害と安全配慮義務安全衛生管理の中心的な法律である安衛法は,その遵守が強制されている。しかし安衛法を守っていれば,全て安全衛生配慮義務を果たしているとはいえない。安全配慮義務は法令で定められたものにとどまらず,危険の予見されるものについて,その防止義務を負うものである。例えば,「安衛法を順守していたが,事故が起こった場合がある」どこに問題があったのか,「潜在的危険を見落とさなかったか」などがある。つまり,安衛法上の刑事責任の範囲と民事上(安全配慮義務)の責任は必ずしも一致するものではない。 また,安全配慮義務[13]は,法律として規定されているものではなく,たくさんの裁判判例の中で積み重ねられ確立されてきたものであると聞いている。安全配慮義務の法的根拠は,一般に労働契約関係に付随する信義則から,使用者が労働者に対する債務として発生するとしている。最高裁の判例によれば安全配慮義務は「手段債務」[14]として捉えており,同義務は,業務の遂行が安全に行われるように,事業者が業務管理者として予測可能な危険等を排除するために,人的物的諸条件を整備する義務とされている。簡単に言うと,安全配慮義務とは,「企業・法人が労働者に労務提供のため設置する場所,設備もしくは機器・器具類等を使用し,事業者の指示のもとに仕事をする上において,労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている」としている。以上の事は訓練現場にも当てはまる。図9は職業訓練における法的な関係を示したものであり,図8の労働者を訓練生及び学生に置き換えたものである。直接指揮管理者と訓練生(学生)の関係では,図が示すように施設長から権限を委譲された直接指揮管理を行う者が,実行行為者となる。-6-直接指揮管理を行う実行行為者の責任として,安全配慮義務がある。安全配慮義務は,結果が起きてからの「結果責任」ではなく,事故が起きないように「手段を尽くす義務」であるとしている。したがって,安全管理をしっかりと行い,安全衛生教育や物的な危険防止措置も講じていることが望まれる。しかし,訓練生(学生)が自分の過失で安全な作業手順を守らなかったために事故を起こすケースもある。例えば,「通路を歩いていて,よそ見をしてドアにぶつかり怪我をした」こんなところにドアを作ったのが悪いんだ「訴えてやる」などの問題がいたるところに存在する。このドアは本当に危険で違反的なものなのかが問題であるが,その危険防止のための手段を尽くしておれば,責任は問えないとしている。その手段内容は社会通念上必要とされている手段を尽くしていれば,災害の結果が発生しても,その責任は問われないのが「手段債務」の考え方がある。図10は安全配慮義務と手段債務について最高裁[15]が示したものである。

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