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図7 労働災害発生における企業、法人の4重責任図8 災害発生と法的責任-5-5.1 労働災害発生と4重責任一般に事故・災害が起きると責任が問われる。災害の多発は,企業であれば経済的損失や,社会的責任は膨大なものであり,一度事故を起こすと様々な責任に問われ,倒産をも招きかねない。図7は企業における労働災害発生の企業,法人の4重責任[11]を示したものである。職業訓練を行う上でも,安衛法に準じて訓練が行われる。代表管理者(施設長)から業務の一部の権限と責任を委ねられ,職業訓練を行なう直接指導者(実行行為者)においても,事故・災害が起こると,両罰規定により責任が問われる可能性が出てくる。 最近,企業の社会的責任(corporate social responsibility : CSR)[12]ということばをよく耳にするが,CSRの考え方では,企業の全ての利害関係者,すなわち顧客,株主,従業員のみならず,取引先や地域住民など,広い範囲で意識的な配慮行動を取ることが求められている。各訓練施設においても,度々事故・災害を起こす訓練施設では,受講生をはじめとする関係各所は敬遠する傾向となる。事故・災害が起こらないような配慮的行動が求められている。5.2 組織と安全管理責任それでは,事故・災害が起こると誰に責任があるのか。企業,法人及び各訓練施設には,安全衛生管理を行うべき法的責任があることは先に述べたが,図8は,一般的企業における雇用主(法人)と労働者の法的責任関係について示したものである。図では左側に雇用主(法人),右側に労働者とし,両者の関係は雇用契約で成り立っている。安衛法では企業,法人における刑事上の責任として,まず労働安全衛生法の違反があげられる。罰則は直接の違反行為者を罰するほか,同法は,事業者責任であるため,事業主(施設長)をも罰する。いわゆる両罰規定をとっている。(安衛法第122条)図中の権限分配については,雇用主,法人が直接労働者や作業者を指揮監督管理することは物理的に無理であり,直接指揮管理,監督するものに権限分配や権限を委譲することになる。権限を委ねられた管理者や指揮監督者が,職場の危険防止のための安全衛生条件の確保と点検及び管理措置,安全衛生教育と作業指揮の実際上の「実行行為者」となる。 例えば,仮に安全衛生管理者が都合で職場巡視しなくて,危険や違反を指摘しないで放置し,それが重大災害となった場合,法的に責任を問われるのは安全衛生管理者ではなく,事業主(トップ)と末端の指揮監督を行った「実行行為者」を罰すると,安5.安全管理責任と安全配慮義務

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