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図3 ブロック課題と言える。今後検証を重ね形状を更に細分化し,今まで表すことができなかった寸法入れの技能のマニュアル化に努めたい。寸法入れ訓練には簡単形状のブロックをスケッチし,図面化する作業も行う。図3のようなナイロン材料のブロックを34個製作し,訓練に用いるようにした。訓練生は,この教材をノギスとスケールで測り,部品図にする。教科書等に見られる立体図を2次元図面にする課題は,立体図の向きから主投影図を訓練生は定めてしまう。また寸法記入法とする課題があったとしても,立体図で描かれた課題には既に寸法が記されており,訓練生は課題図のとおり寸法記入法を理解せずに同じ位置に記してしまう。ブロックのスケッチ訓練では,単純形状のブロックを手に取り測り,それを図面にする。どこを主投影図にするべきか,断面にするべきか,どこを省略して表現し寸法を入れるべきか,訓練生は大いに悩む。いきなりA2用紙に描く複雑形状の部品に寸法を入れさせたとしても,訓練生には理解が難しいものである。簡単形状のブロックをスケッチする訓練は,作図能力向上に大変効果がある。寸法入れに対する指導は,指導員が訓練生の描いた図面がJISに準拠する描き方であるか,JISに準拠するが定例としない描き方ではないか,読み手に分かりやすい表現であるか等,まさにOJT的手法による個別指導を繰り返さなければならない。より多くの単純形状の寸法入れを経験させることにより,設計意図である機能,加工方法,組み付け方法,測定方法等の論理性があることを理解させなければなら-6-ない。何より寸法入れは,経験の蓄積により習得する技能である。企業で上司先輩が行うように,赤ペンを図面に入れながら根気よく丁寧に指導をしていくしか手段がない。訓練生には,「私のクセを体で覚えなさい」と常に言っている。この手法には,指導者が設計製図に対する技能,特に寸法入れに対する技能を持っていなければならず,指導者の技能や経験に影響され,主観に左右されやすい。そして何より技能であるがゆえに,マニュアル化ができないという問題点が挙げられる。しかしながら,設計意図を伝える図面を描くためにも,寸法入れは必ず習得しなければならない大切な技能の一つである。2.3 No.3【部品図作成】寸法入れを理解できるようになった後に,部品図作成訓練に移行する。計画図から部品図を作成することを,企業の設計現場では“バラシ”と呼ぶ。歯車・バネ等は,要目表から計算により部品図を描くこともあろうが,ほとんどの機械部品は計画図からのバラシによるものである。バラシは,部品図を組立て描く組立図作成作業の反対工程になる。そのため,バラシを行う前準備として,単純な形状部品数点で構成される組立図を描くことにより,図面の中で部品を組立てる感覚を理解させる。そして,その後にバラシの課題に入る。今までの訓練で,A4用紙の小部品しか描いていなかったものが急に複雑な組立図を見ると戸惑ってしまうものである。そのために,まずは技能検定2級水準の解答図面のトレースを行い,その部品形状を理解させる。次に図面の組立図,つまり課題図(印刷物)を与え,機械を構成する部品毎に色鉛筆で色分けし,部品形状を理解させる。この時に部品の色分けをするだけでなく,組立図に示される機械の機構・部品毎の役割を訓練生に説明し,設計的思考の醸成を図ることが大切である。設計者としての思考を持つことが,部品図作成時の仕上がりに大きく反映されてくる。これは,企業で設計者が設計補助者に,計画図からの部品図作成依頼を行いながら,設計補助者を設計者として育成していく実際の手法と同じである。このような方法でバラシを数枚行った後,技能検定3級水準の

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