4/2018
7/36

図1 教材「基本形状の寸法入れ」(a)教材なしで描いた場合(b)教材による指導(c)指導後の寸法入れ図2 教材利用による指導効果が技能であり,図面を描く者の腕の見せ所になってくる。技能と技術の違いについて語るとき,技術はマニュアル化ができ,技能はマニュアル化ができない能力と言われる。寸法入れは,まさにマニュアル化のできない技能である。図面力の無い設計者は何の思想も無く寸法を入れ,「入っていれば良い」としてしまう。そしてそれで良いものとしてしまうこともある。また寸法入れの技能は,形や数値となって評価できるものではない。一定の技能のある者が図面を見て理解できる主観的技能である。それがゆえに,製図に係る技能が評価されにくくなってしまう要因となる。図面の寸法入れには,多くの「形式知」と「暗黙知」がある。「形式知」はJISを理解すれば良いものの,「暗黙知」はそうではない。図面を描く者は,読み手が迅速に正確にイメージを理解できるように深く思考する。3次元CADはモデリングを投影することにより,正確な形状の投影図を描くことができるものの,設計意図を伝える寸法入れまではできない。寸法入れは人が行うものである。そこに図面を描く者の技能が必要になる。寸法入れ訓練は,投影法の訓練で描いた簡単形状に寸法を入れ,部品図とすることから始める。寸法入れにはマニュアル,つまり手順書がない。仕事の教え方の基本の「やってみせる,やらせてみせる」という技能であり,そのため訓練生には大変理解しにくいものになる。投影法で訓練した簡単形状とは,基礎的形状である。どのような複雑な形状も,基礎的形状の集合体である。寸法入れの「暗黙知」は,基礎的形状からのパターン化があれば,訓練生は理解しやすい。そこで形状をいくつかのプリミティブな要素に分け,それに寸法を表した教材を訓練生に与えることとした(図1)。図2に訓練生が実際に描いたものを示す。教科書等で寸法記入法について学んだ知識だけでは,図2(a)のように,ただやみくもに寸法を入れるだけになってしまう。しかし教材を示し,「形状は図2(b)のように①②③⑨の基礎的形状から成り立つので,それを元に寸法を入れるように」と指導をすると,図2(c)のように暗黙知が一定水準守られた寸法を入れることがで-5-きている。初めは寸法入れのアルゴリズムが理解できない訓練生も教材を参考にすることで,非常に短時間で理解を示すようになる。プリミティブな要素分けによる寸法入れ教材は,非常に効果的であった

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る