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表1 製図実習カリキュラムそれは間違っている。「図面を描くことができる」とは,設計意図を伝える技能を習得するということである。では,なぜ図面を描けないのか。それは図面の役目から図面を描くことには「形式知」の知識と「暗黙知」による技能習得が必要になるためである。「形式知」とはJISの機械製図通則により示される知識である。また,図面を描くには機械加工の知識・材料の知識・力学的知識等多くを学び理解しなければならない。しかし,これらに係る教科書の全てを丸暗記しても図面を描くことはできず,図面に係る技能の習得が不可欠になる。図面に係る技能,これが「暗黙知」である。図形の表現の方法,設計情報伝達能力に係る技能である。図面には,ほとんど文字情報は無い。図面に描かれた図形状の表現や寸法の入り方等から,読み手へ正しい情報,つまり設計意図を正確に伝えなければならない。そのために,図面を描く者はその技能を身に付ける必要がある。これは,設計現場で上司や先輩からOJTの手法で学んでいくものであり,ゆえに製図指導の難しさが生じる。知識の「形式知」とマニュアル化ができない技能の「暗黙知」が「図面を描くことができる」になる。これが図面力であるといえる。以後に愛知障害者校の8月までの「図面を描くことができる」とする訓練カリキュラムを示していく。2.1 No.1【投影法】JIS B0001「機械製図」にある投影法を理解し,図面を描く表現方法を習得する。製図技能習得の第一歩は,第三角法の理解にある。訓練生の多くは,-4-単純形状であれば図学の知識が無くとも直感的に形状を理解し読み取ることができるものである。第三角法の説明後,実際に立体から三面図にする作業を行う。そして,断面法,部分投影法,補助投影図,相貫線の書き方等を学んでいく。これら図面の表現方法を教えるここからが,製図を教える者として製図の授業に入ったと思えるところである。製図には多くの約束事,つまり製図通則がある。これらを,一つ一つ事例を挙げ説明していく。そして立体から2次元にする課題に対しても,ただ単純に三面図を描くのではなく,訓練生に色々な投影法に基づく表現方法を取り入れさせる。訓練生の中には,寸法記入も安易にできるものと思い寸法を入れてしまうものだが,寸法を入れさせることはしない。投影法訓練と寸法入れとは作業分解し,正しい投影法のイメージを迅速に描くことだけに専念させる。トレースの訓練は多くは行わない。複雑な形状のトレースを行っても絵を写すのみであり,製図通則が記憶に残りにくい。できる限り多くの簡単な形状の立体を実際に考え,そして手を動かし,2次元図面にする。これより図面を描くことに必要な立体形状認識能力と投影法の表現力を身に付けていく。2.2 No.2【寸法入れ】製図訓練において,私はこの寸法入れ訓練を最も重要視している。寸法入れとは,設計者の意図を次工程に伝えるべき手段である。寸法入れができるということが,図面を描くことができるといっても良い。寸法入れは,まさにJISによる「形式知」と,設計意図を伝えるべくある「暗黙知」の技能である。JIS Z8317-1,JIS B0001には寸法記入に関するルールが述べられている。機械部品には多くの形状形態があり,それに合わせたおのおのの決め事がある。そして寸法入れには多くの暗黙のルールもある。本当に寸法を入れることができるとは,文章も使わず組立図からの機能,加工基準,関連寸法等を,寸法を入れる場所だけで読み手に設計意図を伝えることである。また,少しでも読み手が誤ることがなく,読み取る時間を短縮させる工夫もする。それら全て

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