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ろな問題点が内在しており,例えば公害対策(現に世界的な海浜リゾートで有名なボラカイはホテル,レストランからの汚水が海に直接排水され深刻な海岸汚染問題のために,大統領名で6か月の海浜閉鎖が実行されている)。これは氷山の一角でPH中の海浜リゾートは同じ問題を抱えている。住宅の不足のための宅地開発では山,丘の無計画な土地整備で大雨による土砂崩れが起こり多数の犠牲者が出ている。人口密集地では火災が多く(家の中で薪など使って調理する。),多くの火災被害者で緊急避難先や仮設住居の備えも十分ではない。最近多い地震への対策は乏しく,現状でM7以上震度なら都市の半数の建物は倒壊すると予想されている。気候変動から起こる台風の進路の変化はPHに台風の被害を増加させている。大雨が少し続くと町中が水浸しになる。下水システムの問題である。PHは世界の中でも子供の出生率が高く,社会に貢献できる年齢層(13歳から65歳)の比率が総人口の半分以上である(人口のボーナス)。世界で今後発展する国の条件に人口が入っているからPHの今後も明るいといえる。さらに教育制度の充実により英語の話せる若い優秀なグローバル人材の宝庫でもある。特に今後の職業教育システムにより若年層の技術者や技術労働者が生まれることは今後の経済の発展のみならず,貧困の解消,失業率の改善などに繋がる。まとめ (可能性)・「Build,Build,Build」政策が短期,長期的に経済に効果を表す。・人口のデモグラフィーによれば今後も若年層の人口は十分にある。アメリカの機関の統計予測によれば,PHの15歳から24歳の,2025年の人口予測は2250万人である。 (問題点)・急激な国土の開発は新しい問題を生み出す。(地方政治の汚職腐敗,消費行動の変化,自然の破壊,都市の混乱,利便性と伝統の喪失等)・災害などのソフトウエアが不足。(ハザードマップ,避難誘導システム,警報通信システム)-27-・開発の環境アセスメントが不十分で開発が進む可能性。・社会開発の部分が不十分である。住宅問題,高齢者,環境弱者対策が不十分。・若年層の職業教育のシステム作りが急務。・自然資源保護,環境保全対策の充実。2.11 資源・エネルギーPHの資源は,農産物,漁業加工物,鉱物(金,銀,レアメタル等),植物の生物多様性を利用した薬品類,自然の観光資源等が主とするもので,これに人材を加えれば,PHが日本型資源の国であることがわかる。PHは近代化により欧米型の生活様式が普通となる。英語圏であるPHは欧米の製品や食品,生活用品などを輸入して資源のなさを補っている。しかし,農産物には砂糖,コブラ,マニラ麻の世界の農産物市場における位置は高かった。観光資源は世界的に有名なボラカイ海浜リゾートをはじめ,海底洞窟のパラワン諸島,ルソン島北部の棚田のバナウエー,高原リゾートであるバギオ,世界遺産であるビガン等各島々に観光・自然資源が存在している。政府は観光省を中心として観光客誘致に積極的に活動し,海外からのアクセスに飛行場の整備や新設を計画している。エネルギーはPHの抱える大きな問題で,近代化による石油は輸入に頼り,輸入量は年々増加の傾向にある。国内の油田開発もエネルギー省を中心に行っているがまだ生産・利用には至っていない。電力の不足はもっと深刻で,各都市では停電等の供給コントロールでしのいでいる。原子力発電の計画は挫折し,水力,火力の発電では需要に対処できず,地熱発電も地域が限定されている。石油と電力の問題はPHの工業化の大きな障害になっている。省エネの意識はあるのだが,PHのオフィス,商業施設などのクーラーの温度は我々日本人からすると寒すぎるくらいである。建物にクーラーがあるのは官庁,オフィス,商業施設,裕福な住宅など限定されているが,今後生活スタイルの変化などで需要が増えた場合はどうなるのであろうか。建築設計の省エネ化もLEED基準のビルが話題になる程度で住宅も含め今後の取り組みが求められる。

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