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スムーズな交通体系の確立が期待されている。(問題点)・中核となる産業が未発達。・工業製造業の発達の遅れ,高度技術者の不足。・建設関連の施工管理技術者不足,及び現場における作業員の建設教育不足。特に安全管理の教育。2.7 教育・言語PHの教育を語る上で,スペインとアメリカの植民地政策が大きな役割をしている。スペインは300年の統治の間,PH全土にキリスト教を布教しただけでなく,1611年創設のアジア最古の大学サント・トマス大学があるように早くからスペイン入植者子弟や若くしてPHに派遣された神学生のために大学や学院(コレヒオ)がマニラに設立された。地方ではスペイン人のカトリック修道士がそれぞれの教区で読み書き,算数と宗教の初等教育を行った。しかしスペイン語を教授用語とする中・高等教育への道は閉ざされていた。一方,アメリカの植民地政策は教育を中心に全土に英語を中心にした教育施設を開設したため,アメリカの価値観や文化が広まっていった。英語教育は立身出世の道具となった。1908年には官吏養成を目的とした国立フィリピン大学が設立された。PHの教育制度が大幅に変わったのは前政権のアキノ大統領の時で,従来のK10(小学6年,中学4年)からK12(小学6年,中学4年,高校2年)に教育改革が提案され,2018年最初の一期生が高校を卒業した。PHの教育制度を簡単説明すると,義務教育は初等教育で7歳から12歳までの児童を対象とし教育目標は読み書き,算数,思考力,労働技術,国民意識養成などで,公立校は90%以上で他は私立校である。中等教育は4年生で生徒は大学教育や職業コースを通じて実社会に出る準備をする。高等教育は2年間で大学入学準備過程と職業教育コースに分かれている。中学の学費が国予算でまかない無料になったため,この高校の2年コースで職業教育の必要性が高まっている。大学に入学できるのは数パーセントであり,技術革新や人材の高度化の変化に対応するため高度な職業教育の実施が求められている。-24-2018年度のPH全土での就学数は,幼稚園:2,949,870人,小学校:13,867,819人(G1〜G6),中学校:8,126,239人(4年制,G7〜G10),高等学校:2,813,618人(2年制,G11〜G12)である。PHは多くの島からなり,特有な文化,生活様式,言語(方言)が存在する。しかしPHが現在世界的に通用する英語圏であることはあまり知られていない。アメリカの植民地政策でPH人の大多数が英語をしゃべり,アメリカ文化になじんでいることは驚くべきことである。それと若年層の多い人口ボーナスによりPHはグローバル人材の宝庫といえる。まとめ (可能性)・私立大学を中心に多くの高等教育機関が存在する。・若い学生のレベルは高く,グローバルなコミュニケーション能力を有する。・英語圏である。・K12教育制度によりより充実した教育が若年層から開始できる。教育の国民的レベルアップ。・職業教育のレベルアップが見込まれ,技術の習得,レベルアップ,核となる産業の構築が期待できる。・英語の利用により,アメリカ,ヨーロッパとの繋がりが密になり,文学,音楽,芸術等他分野の交流によりアジアの世界的拠点としての役割が生まれている。 (問題点)・K12の確実な完成のための,ヒト(先生),モノ(校舎,設備),カネ(運営費)の充実が望まれる。・各地域言語の重要性を確認する必要。PH人のアイデンティのため。・教育施設が不十分,屋外授業などが依然として行われている。・教師の質,数が不足している。特に小学校レベル。・PH社会は学歴社会で貧しい家庭の子供達の夢が描けない。・各地域での地域の特性を持つ連邦制度による地域独特の政治に備える必要。

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