4/2018
10/36

図4 マウスポインターの設定画面図5 大会用トレース課題は,日々の訓練の中で,図面力を高めていく。1日の訓練終了後に,毎日CAD操作訓練を,1時間程追指導を行った。CADソフトは2次元CAD AutoCAD Mechanical,3次元CAD Inventorを使用した。5月の目標は,3次元CADの操作技法,その後2次元CADの操作技法の向上を目指した。CADは設計者のためのソフトであり,製図の知識のある設計者ならば短期間で習得が可能である。しかしCADは,複雑なマウス操作とコマンド操作が組み合わさる。視覚だけが情報の取得となる聴覚障害者は,指導者が行っているマウス操作と画面上のコマンド操作を同時に確認することができない。手話と筆談で指導を行うと共に,本当に訓練生がコマンド操作を理解しているかを常に確認しながら進めていく。聴覚障害者は,「理解できましたか?」と確認すると,理解が浅くても「わかりました」とうなずくことがある。確実に情報が伝達できたか常に復唱,確認をしながら進めて行く。誤った理解であった時は,指導者の連絡手段が未熟であるとしなければならない。まさに職業訓練の基本,仕事の教え方の基本とも言える「やってみせる,やらせてみせる」である。また,指導では早いマウス操作は決して行わず,図4のようにマウスポインターを変更するなどの工夫をして進めた。Ctrlキーを押すとポインター位置を表す機能は大変に有効であった。CAD操作の基本を習得したのちに,訓練生自らに競技大会用のJISに準拠するAutoCAD MechanicalとInventorのテンプレートを作成させた。JIS規格の知識を深めるとともに鋳造品機械加工図面の3Dモデルとトレースを行いながらテンプレートの不具-8-合を修正,また独自のキーカスタマイズを行うなどCAD操作性の向上を図っていく。その後,図面から寸法情報を一切削除した投影図のみの課題図(図5)から3Dモデルと2次元図を描き,それに寸法・表面性状の記入を行い部品図として完成する作業を行う。競技大会においても課題図は,第三角法で描かれた組立図を印刷物で与えられ,それに基づいて指示された部品図を作図する。課題図には,ほとんどの寸法は記入されておらず,図を三角スケールで測定しなければならない。いわゆる「測り取り」と言われる作業であり,これは大変に慣れが必要になってくる。この図形形状だけの図面トレースは,競技の作業時間の短縮につながるとともに,寸法入れ訓練にも効果が認められる。寸法が正しく入らなければ表面性状も記入ができず,上位入賞ができない。訓練生はA2用紙のトレース作図時間3時間半を目指し,7月初旬には,ほぼ目標時間を達成するCAD操作技能を身に付けることができるようになった。7月に入り,技能検定2級水準の模擬問題を実施し始めた。日々の訓練で図面力も向上し,バラシができるようになってきた。課題を1枚作図するごとに,訓練生の前で図面を確認する検図を行った。訓練生の前で検図を行うことは,訓練生本人にとって大変に辛いものである。しかし,本人の前で検図するからこそ,作図能力と本人の検図能力の向上を図ることができる。まさに企業で上司が部下へ行うOJTの実践である。100点の図面を描くことは極めて難しい。図面を描く者は必ず自分の図面に思い込みがあり,見落としてしまうからである。いかに客観的に

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る