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ぞれが発表し合い,共有化していきます。教えたり教えられたりすることで理解が深まります。3.1.6 ルール化グループワークをルール化することで,今,何をしなければいけないのか,次に何をしなければならないのかといったことを分かりやすくします。自分ルールとの不一致からくるトラブルを回避し,今,しなければいけないこと,次にしなければならないことを正しく認識し,落ち着き,安心して行動に移すことができるようにルール化を図ります。パスができることやメモにする,よかったところをほめる等は重要なため,巡回中には特に気を配るようにします。3.1.7 スモールステップによる手順成功体験をより多く積むには,初めから高い目標を目指すのではなく,目標を細分化し小さな目標を作り成功体験に結び付けるスモールステップでの訓練が効果的です。3.1.8 焦点化伝えたい情報が多いと何が重要なのかがどうしてもぼやけてしまいます。特に言葉による情報の中から重要な点を見つけ出す力が弱い特支者がいるため,伝えたい内容をポイントに絞りシンプルな訓練にします。3.2 訓練実施上の配慮訓練を実施するうえで,アクティブ・ラーニングの考え方や,厚生労働省が提供している『合理的配慮指針事例集』5)等を参考にして,次のような配慮を行います。3.2.1 主体性を引き出すためSST(Social Skills Training)の考え方を活用SSTはコミュニケーションや社会適応に様々な理由でうまくいかない状況を改善するための治療的なアプローチです。本件では,緊張しすぎたり,どのようにふるまっていいかわからなかったりといった-6-困り感に備えて,SSTで用いる指示方法の段階を参考にして,コミュニケーションの取り方や人を肯定したり自己表現したりするコツを提案します。3.2.2 共有化実施上の工夫本テーマである特支者を含むグループワークは,緊張やコミュニケーション能力,失敗経験から,委縮して参加者が対等な関係を維持できず,発言の格差を際立たせるだけの結果になる懸念があります。「自分の発言が受け入れられている」という安心感がもてるルール化が重要です。資料やインターネットから情報を入手し,お互いに持ち寄り,認め合う体験を通して,自分がなすべきことを他者の行動からの気づきとして,深めさせ,訓練する喜びや,やる気を引き出します。そのために,職業訓練指導員(以下,「指導員」という。)から与えられた課題をグループで取り組む「討議」と討議後にグループ内でそれぞれ感じたこと,考えたことを互いに言い合う「シェアリング」でグループワークを構成します。指導員の指示したテーマをグループ内で討議し,その時の気持ちの「肯定的なことばのキャッチボール」をとおして,徐々にお互いを認め合って人間関係を深めていけるようにします。人間関係が希薄である一部の特支者にも,自然にお互いを尊重し,認め合うことで満足感を持たせることができると考えます。これにより,理解が進んでいる者はより整理された理解が深まり,そうでなかった者にとっては不足分を補う形となり,お互い共存できる関係ができます。これは,情報にとどまらず,「いいね!」といった感情面での共有化につなげることで,チームの一体感を醸成する効果もあります。3.2.3 自己肯定感の弱さに対する配慮特支者にはコミュニケーション経験の不足や二次障害としての自己評価の低さがあると思われます。自己肯定感が弱く,コミュニケーションに消極的なために,人間関係に悩みを抱きがちといった事例もありました。このことを踏まえ,当センター内でもコミュニケーションのきっかけづくりや自己肯定感の育成を適切に指導する必要があると思われます。

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