3/2018
26/32

図4 2つの質点系の衝突イメージ図5 平面上での物体の非弾性衝突イメージ表1 衝突前後の物体1,2の速度としない物体と考えると理論的な説明が困難である。そこで,図4のような簡易的モデルを用いると,非弾性衝突を理論的に解釈することができる。図4に示すように,「質量Mの質点(物体1)」と「質量mの2個の質点がばね定数kのばねで結合された質点系(物体2)」が存在するとし,静止している物体2に物体1が速度v1で衝突する状況を考える。これらが衝突した際,まず,物体2の左側の質点が衝突される(反発係数e=1の弾性衝突とする)が,衝突直後,物体2のばねの縮みはまだ発生しておらず,右側の質点も動き出していない。そこで,衝突直後の物体1の速度をv1',物体2の左側の質点の速度をv2'とすると,運動量保存則,及び反発係数の式から,式(3),(4)が成立し,これらから式(5),(6)が得られる。衝突直後の物体2の重心速度は,式(6)で得られる速度の半分,すなわちMv1/(M + m)である。そして,衝突後,物体2には外力が働かず,物体2はこの重心速度で等速度運動を行う。結局,物体1,2の衝突前後の速度は表1のように整理される。表1に示した速度情報を用いると,物体1と物体2の間の反発係数eが得られる。つまり,式(7)の計算によりe=m/(M + m)と求まり,非弾性衝突であることを示すe<1が導かれる。-24-このように,衝突物体の一方を変形する弾性体と見立てると,非弾性衝突の理論的解釈を展開することは可能である。2.4 平面上での非弾性衝突2.3のように両物体が移動して衝突するのではなく,一方が移動する物体で,他方が固定化された平面である場合,「衝突前後の運動エネルギーの和E,E'について,E= E'の場合が弾性衝突,E > E'の場合が非弾性衝突」とする考え方は,移動する物体にのみ適用し,弾性衝突と非弾性衝突の区別がなされる。このような平面上での非弾性衝突について論じるとき,初等物理では,移動する物体の速度を図5のように分解し,衝突前後の速度についての関係式が立てられる。すなわち,衝突前後の物体の平面に平行な速度成分をv1x,v2x,平面に垂直な速度成分をv1y,v2yとし,物体と平面の間の反発係数をe(<1)とすると,式(8),(9)が成立するとされる。

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る