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職業能力開発総合大学校 二又 風香わが国の労働政策では女性活躍の推進が重点事項の1つに位置づけられ,現在,その実現のための施策が推進されている。厚生労働省が平成28年に策定した第10次職業能力開発基本計画[1]にも,女性を含め希望する者の継続的就業を可能とするため,職業能力開発機会を提供する必要性が示されている。このような情勢の中,離職者へ職業能力開発機会を提供する一主体であるポリテクセンター(以下,「ポリテク」という。)では女性活躍促進に向けた取組みとして,女性向けコース,託児サービス,女性向け施設見学会等を実施しており,女性へ職業能力開発機会を提供するための素地は整備されつつある。しかし,既存の取組みは入所前の受講者募集に重点が置かれ,入所後,女性のみを対象とした就職支援が行なわれることは稀である。希望者の継続的就業という政策の実効性を高める意味で,安定した雇用の場と言われるものづくり分野の訓練を実施するポリテクの重要性は増している。政策の実効性を高めるためには,ポリテクでは単なる女性入所者数の増加のみならず,就職者数を増加する必要があり,地域の女性従業員・女性技能者へのニーズや女性固有の特性を捉えた支援が求められると考えられる。そこで,本稿では,事業所の女性従業員への人材ニーズを調査し,入所後の女性受講者を対象とした就職支援を継続的に実施するポリテク関西の取組みを例に,ポリテク入所後の女性受講者を対象とした就職支援の取組みの意義と課題を考察する。-4-2.1 ポリテク関西において実施する就職支援全国61箇所のポリテクでは,地域の人材ニーズに基づき,ものづくり分野の標準6ヶ月の職業訓練を実施しており,訓練を通じて受講者へ職業能力の習得を促すと同時に,就職支援の取組みとして求人情報の提供,応募書類の作成支援,個別相談,面接指導を実施している。その実績を全国的に見ると,平成28年度の就職率は88.4%を達成している。ポリテク関西では,機械系と電気・電子系分野における11種類の訓練コースを開講しており,近年の就職率は全科平均で90%程度を推移している。ポリテク関西においては毎月2コースから3コースの訓練コースを開講しており,入所者数は毎年,年間600名程度である。年間の入所者数の総計から見ると,ここ数年,女性は全受講者数の1割程度で推移しているが,コース別に見ると,入所月によってはCADを扱うコースやプログラミングを扱うコースにおいて女性が定員の2~3割程度を占める等,コースによっては女性の割合が増えてきている。ポリテク関西の就職支援は,各科の訓練カリキュラムに含まれるものとそうでないものに大別される。カリキュラム内の就職支援として,ほとんどのコースにおいて,就職活動に必要なコミュニケーション能力やビジネスマナー等の習得に関する項目や,訓練科に関連する職種への理解を促す基礎知識の項目をカリキュラムに取り入れており,さらに一部のコースにおいては就職支援の項目をより強化し1.はじめに2.ポリテク関西におけるこれまでの取組みポリテクセンターにおける女性受講者を対象とした就職支援の意義と課題

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