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香川職業能力開発促進センター 五十嵐 智彦栃木職業能力開発促進センター 廣瀬 拓哉近年,職業能力開発施設では,様々なバックグラウンドを持つ受講生が多く在籍するようになった。特に離職者向け職業訓練においては,受講生のレディネス(学習準備性)が非常に幅を持つようになっている。そのため,1つの教室で同時に訓練を受講する一斉形式による訓練は,いっそう難しくなってきている。ところで,学習指導に関する理論として「スキナー型プログラム学習(以下,「プログラム学習」という。)」という手法が知られている。プログラム学習は,行動心理学におけるオペラント条件付けをもとに体系化された学習指導手法である。プログラム学習は学校教育でも一時期導入が試みられたようであるが[1],十分な真価が発揮されないまま放棄されてしまった。職業訓練においても1970年代に導入が試みられた形跡が見られるものの[2][3][4],学校教育同様,現在に至るまで継続して適用されるに至っていない。しかし,プログラム学習はオペラント条件付けなど,行動心理学の理論を出発点にしていることから,様々なバックグラウンドを持つ受講生に対し,一様に知識・技能を身に付けさせることが期待できる。-7-筆者らは,プログラム学習に注目して,過去の職業訓練における導入事例をもとに,長所と短所について整理,考察した。そのうえで,従来のプログラム学習に修正を行い,離職者訓練の特に座学分野の訓練に対して適用する手法,並びに教材の設計手法(プログラミング)について検討した。あわせて,当該手法を実際の離職者向け職業訓練に適用し,その訓練効果について考察したので報告する。なお,本稿において議論する「プログラム学習」は,バラス・スキナーによる行動心理学に基づく学習指導理論のことであって,コンピュータプログラミングに関する学習とは何ら関係はない旨,念のため付しておく。本稿では,プログラム学習を以下に示す「プログラム学習の5原理」を満たすものとして議論を進めることとする[5]。⃝ 積極的反応の原理(話を聞くだけでなく,自ら手を動かし,問に解答していく。)⃝ 即時確認の原理(問の正誤は,解答の直後に伝える。)⃝ スモールステップの原理(問の難易度は,はじめは簡単にして,徐々に難しくする。“徐々に”1.はじめに2.プログラム学習の概要と導入事例の調査平成29年度職業能力開発論文コンクール 厚生労働大臣賞(入選)受賞幅広い特性を持つ受講生に対応するためのスキナー型プログラム学習を活用した離職者向け職業訓練に関する報告

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