1/2018
19/40

図8 (d, h, w)= (4, h, 18)デザインの試験片に   おけるhと最大伸び量xmaxの関係図9 切り紙構造を有する試験片正面図(ダブル構造)図10 シングル構造,及びダブル構造を有する   (d, h, w)= (4, 5, 18)デザインの各試験片が   示す力学応答の比較これをグラフ表示すると図8のようになり,やはりhが小さいほど最大伸び量xmaxが大きくなることが確かめられる。以上のことから,d,h,wを変化させて転移点を操作すると,それに伴って,必然的に伸びの程度も変化することが理解できる。転移点を操作しながら,なおかつ,伸びの程度も操作するには,切り紙構造の繰り返し回数を増減する手段が簡便である。例えば,図4で示したように,(d, h, w)=(4, 2, 18)デザインに対して,(4, 5, 18)デザインの転移点は高荷重側にシフトする一方,伸びの程度は鈍化する。転移点は(d, h, w)=(4, 5, 18)デザイン水準の高荷重側を狙い,一方で,伸びの程度は(d, h, w)=(4, 2, 18)デザイン水準を狙うには,図9のように,切り紙構造をもう一組多く繰り返した構造(以下,「ダブル構造」という。)にすればよい。図10に,シングル構造,及びダブル構造を有する(d, h, w)= (4, 5, 18)デザインの各試験片が示す力-17-学応答の比較を示す。シングル構造に対して,ダブル構造にすることで転移点を維持したまま,伸びの程度を倍増させられることが確認できる。今回,ポリプロピレン製試験片でのデータを提示したが,金属等の他材料からなる試験片でも,基本的には同一変形挙動に基づく同様の力学応答特性を示すであろう。切り紙構造の新たな活用事例が国内外で検討されつつあることは冒頭に述べたとおりであるが,シート状というシンプルな形態でありながら,二段階構成の変形挙動に基づく非線形の力学応答特性を示す切り紙構造には,他にも多くの用途展開先の可能性が潜在することが期待される。そうした可能性の一つとして,筆者らは地震に対する防災・減災用途という切り口の可能性に着目している。3.1 「非構造部材による被災」に対する手立ての必要性気象庁の発表によると,2016年度に日本国内で発生した震度1以上の地震は6587回にのぼる(15)。このような地震大国・日本において,戦後の地震政策は「崩壊しない構造体づくり」に焦点が当てられてきた。その結果,先の東日本大震災においても,昭和56年以降の「新耐震基準」に基づいて設計された建築物の躯体被害が少なかったといわれる(16)。しかしながら,「構造体」の被災対策と比較して,3.切り紙構造の新たな用途展開に向けて

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る