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図2 切り紙構造を有する試験片正面図(シングル構造)図3 (d, h, w)=(4, 2, 18)デザインの試験片が示す   力学応答;(a)力学応答曲線,(b)力学応答曲   線上の各点における試験片形状から,本稿における切り紙構造とは区別する。切り紙構造は,切れ込みデザインに関連する変数が複数あり,変形挙動も複雑である。そのため,細工手法そのものは古くから公知であるものの,「切れ込みデザイン」と「変形」についての詳細な関係については,定量的に十分議論・解明されていないのが実態である(12)。だからこそ,未だに開拓されていない用途展開先も残されていることが期待される。以下,切り紙構造が示す力学応答の特徴を見ていくとともに,筆者らが関心を抱いている分野の一つである地震災害を想定した防災・減災分野に言及しながら,新たな用途展開の開拓を呼びかけたい。2.1 力学応答特性の基本的特徴本稿では,簡単のため,図2に示すような最小単位の切れ込みデザインを有する最も単純な切り紙構造(以下,「シングル構造」という。)を元に議論を進める。このシングル構造では,試験片は中心周り5箇所の切れ込みで構成される上下左右対称となる切れ込みデザインを有し,各切れ込みは試験片の長手方向に対して垂直に形成されるものとする。ここで,図2に示すように,各切れ込みに関連する変数としてd,h,wをおく。このような切り紙構造を長手方向に引っ張ったときの変形挙動は,大きく二段階構成となる(13)。第一段階は,平面的な変形が起こる過-15-程である。この変形は,いわば金属材料における比例限度内での微視的な弾性変形(14)に似ており,伸びの程度も小さい。続く第二段階は,平面的な変形から立体的な変形に移行して以降の変形過程である。第二段階の変形過程に移行した場合,伸びの程度は急激に大きくなる。図3(a)は,(d, h, w)=(4, 2, 18)デザインの厚さ0.18mmのポリプロピレン製試験片が示す力学応答曲線である。また,図3(b)には,図3(a)の力学応答曲線上の各点における試験片形状を示す。このように,シート状材料に単純な切れ込みデザインを付与することで,二段階構成の変形挙動が容易に得られることが分かる。なお,切れ込みデザインやシート材料次第では第二段階に移行しない場合も考えられる。2.2 切れ込みデザインの違いによる力学応答特性の違い図3(a)で,(d, h, w)=(4, 2, 18)デザインの厚さ2.切り紙構造の力学応答特性

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