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とは,解答者がつまずくことの無い程度まで,緩やかに難しくしていくことを意味する。)⃝ 自己ペースの原理(学習者の個人差は,問への解答のスピードのみにあらわれる。)⃝ 受講生検証の原理(教材の質の評価は,実際に受講生に適用することで行われる。)筆者らは,『技能と技術』の過去の文献を中心に調査を行った。その結果,職業能力開発の現場において,プログラム学習は1960年代後半から1970年代前半において多くの試行が行われていたことが分かった。初めてプログラム学習に関する記事が掲載されたのは,1968年(昭和43年)の波多のものである[6]。この記事は,昭和20年代から30年代の職業訓練の状況について解説したものである。本文献において波多は,「昭和35年にアメリカから入ってきたプログラム学習は,いまだ研究と試作の段階である」と論じている。翌年の1969年には,寺崎によるプログラム学習による電気理論の訓練の実践についての論文が掲載されている[7]。この論文は,プログラム学習の実践について,「技能と技術」に掲載されたものとしては初めての論文であり,交流回路におけるベクトル記号法の取り扱いについてプログラム学習を試行した結果を報告している。その後,1969年vol.4[6]-[11]と1973年vol.3[2][3][12]-[15]の2回にわたり,プログラム学習に関する特集が組まれている。このことから,1960年代の後半から1970年代のはじめにかけて,プログラム学習による職業訓練に大きな関心が寄せられていたと考えられる。しかし,1970年代の後半ごろから,プログラム学習に関する記事が急激に減少していき,1980年代には掲載される論文はわずかとなる。すなわち,職業能力開発において,プログラム学習は1960年代後半から1970年代前半において最も多くの試行が見られ,それ以降は関心が薄れていったものと考えられる。以上,職業訓練におけるプログラム学習の歴史を概観した結果,1960年代後半から1970年代前半にかけての一時期,プログラム学習が盛んに試行されていたことが分かった。それにもかかわらず,現在に至るまで継続的に適用されるに至っていない。それは,プログラム学習が実践の場面において,何らか-8-の”問題”を抱えているからに他ならないはずである。プログラム学習を実際の訓練で実践する場合,過去の教訓から長所と短所を整理したうえで,長所においては十分にその効果が活かされるようにし,また,短所は解決または回避されるようにしなければならない。筆者らは,プログラム学習について,その問題点を整理し,指摘する文献を調査した[2][3][16][17]。そこで筆者らの考察も合わせ,かつて試行されたプログラム学習が失敗した原因を考察し,次の2点にまとめた。すなわち,プログラム学習の適用失敗の原因は,①訓練のすべてをプログラム学習のみで完結させようとした点,②ティーチングマシンなどの学習機器の活用にこだわりすぎた点にあると考えた。そこで,これらの問題が回避される形でのプログラム学習教材の開発を試みた。筆者らはプログラム学習の利点を活かせるよう,次のコンセプトのもとに教材開発を行った。①プログラム学習の適用範囲適用範囲を“適用”と“評価”に限定する。“導入”と“提示”は,従来通り一斉形式で実施する。②指導員の介入と受講生どうしの教えあいの促進ステップを意図的にわずかに粗くすることで,つまずく者が出るようにする。つまずいた者に対し,指導員が介入したり,すでに完答した受講生が教え合う。③学習ツールツールは,ティーチングマシン等の機器とはせず,印刷教材(ブック式)とする。④反復による習得同じレベルの問題を2~3問ずつ配置し,解き方の確認ができるようにする。教材設計(プログラミング)は,作業分析をもとに実施した。作業分析は,目標となる行動に対して,その要素を洗い出すもので,作業分析をもとに課題を作成した例は多数報告されており[18][19],教材作成において実績があるとともに,プログラム学3.提案する教材開発手法

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