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図2 第54回大会「競技Ⅱ」課題する技能を競う内容であり,その詳細は以下のとおりである。(1)修理課題:電子部品などの損傷,実装ミス,設計ミス,およびプログラムミスなどによって正常に動作しない電子機器の障害を発見し,修理,改修を行う。さらに,障害状況,障害の原因,障害の改修方法を記載した修理作業報告書を作成する。(2)測定課題:障害の原因を明らかにするための測定を行い,その結果について報告する。課題例として,2016年第54回大会の「競技Ⅱ」の課題「五輪寿司」を図2に示す。RFIDを用いて回転寿司を模擬した電子機器であり,回転している寿司の時間管理,購入した寿司の精算機能などを有している。「五輪寿司」には,ハードウェア3箇所,ソフトウェア1箇所の障害が設けられており,これらを発見,修理する課題として用いられた。2.3 競技に必要な技能前節で述べたとおり,本競技は多くの課題内容を含んでいる。課題は文書形式の「仕様書」で提示される。このため,課題では,何を求められているかを理解する文章の読解能力が重要である。そのうえで各課題に求められる技能とそのレベルは以下のようにまとめられる。(1)回路設計課題:基本的なアナログ回路,およびディジタル回路の設計,専用ICを用いた回路の設計,素子の選定や定数の決定ができる技能が求められる。書籍,資料,メモなどの持込みは認め-29-られていないため,設計方法,手順についての知識を有している必要がある。(2)回路図作成課題:電子回路を表現する共通言語である回路図を,回路の動作を的確に捉えられるように見やすく描き,回路図を読図する上で必要な事項をもれなく記述できる技能が問われる。(3)基板設計課題:基板上の部品配置,配線の引き回し,実装する部品記号の表示ができる技能が問われる。なお,回路図作成課題,および基板設計課題については,電子CADの操作に関する技能も必要である。(4)組立て課題:電子回路,電子機器を構成している表面実装部品,リード部品などの取り付け,はんだ付け,ケーブルや電線を用いた配線,ねじ締めなどを含む筐体の組立て技能が問われる。組立て基準は,原則として技能検定課題に準拠している。本課題では,技能検定1級の実技課題の要素として含まれている,ユニバーサル基板を用いたすずめっき軟銅線によるストラップ配線技能が必要である。ただし,技能検定課題と比べて,組立て基板の規模は大きいため,組み立てる際のスピードも求められる。(5)プログラム設計課題:使用しているマイクロプロセッサの構造,動作,マイクロプロセッサで制御する電子機器の動作を理解する必要がある。そのうえで,仕様を満たすプログラムを設計でき,C言語でプログラムを記述できる技能が求められる。さらに,可読性,保守性の高いプログラムを記述することができる技能,プログラム開発環境を適切に使用できる技能が必要である。(6)修理課題:設計ミス,部品故障,配線誤り,部品定数誤り,部品取付け誤り,断線,短絡,バグなどによる機器の障害箇所を判断するためには,回路図,基板図の読図,プログラムソースの解読能力が問われる。実際の修理,改修の際には,組立て技能,プログラム設計技能を活用する必要がある。さらに,修理作業報告書をわかりやすく,的確に記述する文書作成能力が問われる。(7)測定課題:必要な測定器を用いて,測定を行い,測定結果を的確に,わかりやすく記述,報告する

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