4/2017
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図1 板作業図2 模擬家屋図3 先行オーガナイザーと電気工事の関係性図4 電気配線図図5 電気配線に関わる器具た電気工事の職業訓練について分析を行い,いくつかの問題点が存在すると考えることができた。既存の電気工事の訓練では「板(ばん)作業」とよばれる単位作業の実習方法が採用されることが多い(図1)。板作業は省スペースかつ簡易的に実習ができる利点がある一方で,実際の工事現場との乖離が大きいため現場のイメージが把握しづらいという短所がある。また,実際の木造家屋を現寸(1分の1)で模した模擬家屋が訓練で使用されることもあるが(図2),訓練時間の制約のために部分的な箇所の指導しかできない,初学者には電気工事の全体像を把握しにくいなどの短所が存在する。このような問題点を補完する手法として模型教材が活用できると著者らは考えたのだが,文献を調査するなかで模型の学習効果は,オーズベルの提唱した『有意味需要学習』[3][4][5]という学習理論が密接に関わっていることが考えられた。この有意味需要学習の教えるところによれば,『先行オーガナイザー』とよばれる,一種の思考の枠組みを訓練生に最初に提示することで,受講者は全体像を頭の中に浮かべながら学習でき,結果的にはスムーズに学習を行うことができるとされている。この有意味需要学習を電気工事の職業訓練に活用するとき,先行オーガナイザーにあたるものは,電気工事の完成物と考えられる。しかし,既存の訓練では完成物がみえないことが多い。そこで著者らは,電気配線を施した木造家屋模型を受講生に最初に提示することで,電気工事の全体像を把握させ,受講生が実際の現場をイメージしながら課題に取り組ませることができると考えた(図3)。-21-模型教材は,電気工事において基本的な工事の一つとして施工される木造住宅の在来軸組構法を対象とする。軸組模型の作成方法を示した文献[6]を参考に,30分の1スケールの軸組模型に電気配線を施し(図4),これに付随する器具を設置する(図5)。また,題材とする建物の概要を表1に示す。4.模型の概要

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