4/2017
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に競争優位なモノづくりをして,不動産事業を展開するか。同じことをしても競争には勝てない。技術が経営を支えることを念頭に,職人の仕事の工業化に取り組んだ。(1)在来工法を採用する3)木造戸建住宅の建築は,在来工法を採用し,在来工法の特徴を生かす家づくりに取り組んだ。在来工法には・柱,横架材,筋かい,構造用面材,等で強度を確保できる・将来の間取り変更が容易である・開口部(窓,出入り口など)を比較的自由に設定できるなどの利点がある。(2)分業化に取り組む6)従来の工法では,同一の大工が上棟から内装までを施工していたが,建前までは上棟専門の大工チームが一括して対応し,内装は各戸担当の大工が仕上げる分業化で各作業の熟練度を向上させ,効率的な作業を実現している。大工職人を育成するには10年近い長時間の修行が必要となる。具現化にあたっては,熟練した大工しか使えない「ノミ,鋸,カンナ」を使わなくてもすむ工法の開発に取り組んだ。その結果,3ヶ月程度の研修で家づくりが可能となった。あらゆる材料を工場で機械加工することで,労働生産性の向上と加工精度の向上が図れた。集成材に切り替えることで,部材の変形を抑えることができている。1階床は鋼製束とし,精度の確保と傾きの修正を可能とした。さらに柱と梁とを独自開発した組み金物で緊結補強し,構造強度と精度を比較的容易に確保することができた。(3)特注品で作業工数を削減するなど壁などで使用する構造用面材やブラスターボード材を標準品寸法より長くし,2枚張りを1枚とし,取り付けを容易にし,下地処理を削減した。-10-従来畳は,和室が完成してから畳屋が寸法取りにきて,納品する手順で作業を進めてきた。いままでの在来工法では,完成するまでは,寸法を一定程度の精度内に収めることができず,合わせ加工で作業を行ってきた。これを建物と畳の加工精度を向上させることで,畳工場から現場に宅配便で直送させ,畳職人に頼ることなく,寸法取りの作業を省略することができた。釘の長さ,大きさが解るよう,釘の色を変えて間違えを無くすとともに,検査員による目視検査を容易にした。指定の釘を使うことは,住宅強度の確保では守るべき最低要件である。12mmの床用合板を24mmと厚くし,水平力の剛性を高め強度を確保するとともに,根太間隔を広く取り,材料数の削減と打つ釘の数を大幅に削減することができた。色々な商品企画に取り組むことができるようになった。建築部材メーカーに提案し,アーネストワンオリジナル商品の開発にも取り組んだ。例えば,TOTOのアーネストワンオリジナル自動開閉ウォシュレットやユニットバスの魔法びん浴槽等がある。2.5 工期の短縮長期戦略でオペレーションの効率化に取組む約6ヶ月の工期を,改善の積み重ねで2か月にすることができた。工期を1/3に短縮できると,色々なメリットがあることが分かった。棚卸回転率が改善し,資金の余裕がでてくると,同じ要員で売上3倍となるとともに利益も3倍となるなどである。ポーターは「オペレーションの効率化は戦略ではない」7)と言うが,工期短縮という作業改善の先にイノベーションはあると考えて継続的に作業の改善に取り組んだ。例えば,実現可能な年間20%の工期短縮を目標に設定し,5年間繰り返し継続すると,「0.8×0.8×0.8×0.8×0.8≒0.3」と工期は,約3分の1となる。正にオペレーションの効率化を継続して取り組むことは,長期戦略づくりと強力なリーダーシップの結果であるといえる。現場力を生かした作業改善の取り

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