3/2017
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について3つの視点より述べる。1点目は,晴眼者を対象とする「あマ指師」の養成校新設の動きに関する課題である。「あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律」第19条には,「視覚障害者である「あマ指師」の生計の維持が著しく困難とならないようにするため,必要があると認めるときは,健常者を対象とする「あマ指師」の養成学校の新設を認めないことができる」と定められている。これに対し,「学校法人の主張は,ITの進歩などにより雇用環境は大きく変化し,職業選択の幅は広がったとし,生計を維持するための制限は合理性を失ったとしている」(4)などの趣旨で,某学校法人が国を提訴した。現在,視覚障害者の就労の半数が「あマ指師」に従事していることから,今後の判決の動向により影響を受ける可能性があると考える。2点目は,リラクゼーションマッサージやカイロプラクティックなど,「あマ指師」の法的な資格制度を持たない施術者の手技によるマッサージの医業類似行為が行われている現状がある。消費者庁によると,資格制度を持たない施術者の手技による事故が7年間で約1500件あったと報告されている(5)。これらの医業類似行為は,低料金による施術や,店舗の立地条件などにより視覚障害者「あマ指師」の就労に影響を受ける可能性があると考える。3点目は,視覚障害者の「あマ指師」の働く場として,企業内マッサージ師(以下,「ヘルスキーパー」という。),高齢者施設での機能訓練指導員やマッサージ師(以下,「高齢者施設勤務」という。),治療院,病院,訪問マッサージ,開業などがある。このうち,ヘルスキーパーや高齢者施設勤務の求人票には,実務経験者およびパソコン操作(以下,「PC操作」という。)ができる人材が求められることから,視覚障害者の就労に影響を受ける可能性があると考える。これらの課題を踏まえ,センターでは視覚障害者のマッサージ業務の就労支援をより質の高いものとして提供するため,ヘルスキーパーおよび高齢者施設勤務(以下,「マッサージ業務」という。)への就労希望者を対象とする就労移行支援の内容の現状について調査・分析を行った。-2-3.1 対象者対象者は,平成22年4月から平成29年7月までにあん摩マッサージ指圧師の国家資格を持ち,マッサージ業務への就労を希望してセンターの就労移行支援を利用し,マッサージ業務に就労した(内定者を含む)視覚障害者である。3.2 就労支援の内容と分析の方法対象者に対して行った主な就労支援の内容は,【PC訓練】【臨床実習】【就職活動支援】の3つについて,対象者から寄せられた電話やメールなどの意見をもとに分析を行った。① PC訓練マッサージ業務の求人票には,施術記録の記入(以下,「カルテ」という。)や予約への対応・管理のためにメール,ワープロ,表計算ソフトの初級程度の操作ができることと記載されていることがある。視覚障害者は,画面読み上げソフトの利用とマウスの代替とするキーボードによる操作で,いわゆる一般的なビジネスソフトの利用は可能となる。センターではPC訓練として,カルテ管理や予約受付・管理,利用状況の集計・抽出をはじめとした,メール,ブラウザ,表計算,ワープロなど,一般的なビジネスソフトの利用が可能となるようなプログラムを実施している。② 臨床実習臨床実習には,2つの側面がある。一つはマッサージ業務での就労未経験者(以下,「未経験者」という。)に対して,もう一つはマッサージ業務での就労経験者(以下,「経験者」という。)に対してである。未経験者は,養成校を卒業したばかりで,就労経験はなく,臨床経験も少ない。しかし,マッサージ業務の求人票には,「あマ指師」としての実務経験者を優先する記載がある。養成校卒業後は,臨床を経験できる場は少ないため,実践から遠ざかるとその技術が鈍ってしまう。また,経験者についても,離職後定期的に臨床を経験できる場はほとんどな3.方法

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