3/2017
33/50

ントロールする技能を身に付けさせている。訓練が進み2年目選手になる頃には「知恵(改善能力)」が身に付きはじめ,訓練課題に対しての効率を考えた作業方法,工具・道具の改善,製品精度・機能を考慮した作業工程の提案ができるようになる。「心(自らがやり切る精神力)」については先輩やコーチが課題攻略に向けて訓練を自ら率先垂範することで刺激し合い,後輩を引っ張ることができる,よい職場づくりを目指している。また,専門講師による選手へのメンタルトレーニングや,スポーツ心理学の講師によるコーチングスキルアップ講習を実施し,知識を入れ知恵に変えて積極的に行動できるよう教育を実施している。コーチについては選手期間修了生から選抜するものと,現場経験を積んだ五輪卒業生が再び指導者として復帰するケースがあるが,主に前者は高度な技能を即やって見せることが出来る腕を持って指導にあたり,後者は現場経験を生かした知識の広さと改善力で,選手だけでなく若手コーチの指導育成を実施し,指導力の底上げをするよう配置されている。ともあれ選手一人ひとりの性格・行動・体調・精神面を常に考え,情熱を持って指導することが大切と考えている。5.3 五輪卒業生の配属職場当社では技能五輪競技へ参加し始めて17年と歴史が浅く,まだまだ職場の第一線の職長としてリーダーシップを発揮している者は少ない状態ではあるが,五輪卒業生は各職種で培った専門的技能を基礎として現場で必要となる新たな「腕(技能)」・「知恵(改善能力)」・「心(自らがやり切る精神力)」を選手時代で培った技能と同様に積極的に吸収して,現場の核となるよう奮闘している。配属先については,モノづくりの原点である金型製作部門,および製品開発の試作部門,また実際の製造現場の生産性をサポートする保全部門などで活躍をしている。-31-当社では『モノづくりは人づくり』というスローガンの下,技能伝承を大切に考え,現場第一という考えの下で人材育成を推進している。伝承する側の情熱を持って(背中を見せて)指導する人材と,伝承される側の積極的(貪欲)に技能を吸収するような人材の育成を目指すことが大切である。技能五輪ではこのような技能伝承の体系を基本に継続的に人材育成を推進し,よりよい人材を職場へ配属することで,現場のモノづくり,人づくりに貢献できると考えている。以上,当社における人材育成を技術技能ラーニングセンターの役割を中心に説明した。今後技術の進歩に伴い,求められる技術や技能は変化する事が想定されるが,会社を支えるものは変わらず人であり,その人の人間力である。技能を伝承する中で,モノづくりに対する姿勢や情熱も伝えていく事が,当社の人材育成の中で今後も必要なものだと考えている。6.人材育成と技能伝承7.終わりに

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る