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図1 視覚障害者の職業紹介状況東京視覚障害者生活支援センター 石川 充英平成28年度の障害者の職業紹介状況によると,視覚障害者の新規求職申込件数は4725件,就職件数は2129件,就職率は45.1%であった(1)。職業別就職件数では,あん摩マッサージ指圧師などが含まれる専門的・技術的職業は1147件(53.9%)である一方,事務的職業は269件(12.6%)であった(2)。このように視覚障害者の就職状況を概観すると,あん摩マッサージ指圧師(以下,「あマ指師」という。)などのマッサージ業務への比率が高いことがわかる(図1)。視覚障害者を対象とした就労移行支援や職業訓練を行っている事業所は,主に事務的職業への就労希望者に対して画面読み上げソフトを利用したパソコン操作訓練(以下,「PC訓練」という。)を中心とするが,全国で実施している箇所は非常に少ない。東京視覚障害者生活支援センター(以下,「センター」という。)では,事務的職業への就労支援のほか,国家資格である「あマ指師」の免許を有して-1-いる視覚障害者で,マッサージ業務への就労希望者に対してPC訓練と臨床施術実習を実施しており,先進的に取り組んでいる就労移行支援事業所である。本稿では,「あマ指師」の免許を有した視覚障害者で,マッサージ業務への就労希望者に対して,センターで実施した就労移行支援の内容について報告する。「あマ指師」として働くためには,「あマ指師」の国家資格が必要である。国家資格を取得するためには,視覚障害者の場合,国立や民間の養成施設,盲特別支援学校(以下,「養成校」という。)で3年間(学歴や課程によっては5年間),マッサージ理論や実技,基礎医学等を履修し,受験資格を取得する。その上で年1回実施される「あマ指師」の国家試験を受験し,合格すると資格を取得することができる。近年の「あマ指師」の受験者総数及び合格率によると受験者総数1603人中,合格率は84.5%であった。内訳は,晴眼者は受験者数1175人中,合格率91.8%,視覚障害者は受験者数428人中,合格率64.3%であった(3)。晴眼者との合格率の比較より,視覚障害者の「あマ指師」資格取得は難しいことがわかる。また筆者の調査によると,養成校修了時において,就職者数よりも未就職者数が上回っていた年度もあり,全員が就職に至っておらず,国家資格の取得が就職に直結していない現状が明らかとなっている。視覚障害者が「あマ指師」として働く環境の課題1.はじめに2.視覚障害者が「あマ指師」として働くためには企業や高齢者施設におけるマッサージ師として就労を希望している視覚障害者に対する支援について

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