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-14-ところで,本人に障害の可能性を伝え,支援機関の利用を提案するのは最後の手段と位置づけている。なぜなら,本人に障害の可能性の自覚がなくても,職業訓練としてできることが,まだ残されているからである。機構の事例では,配慮訓練生にあわせたトレーニングを実施することで,障害の可能性を伝えることなく無事に就職し,仕事に定着しているケースが複数ある。特に,一般校の指導員が,障害の可能性の自覚がない本人に対して,障害の可能性を伝えて支援機関の利用を提案するのはハードルが高すぎる。場合によっては,障害だと決めつけられたと勘違いされて大きなトラブルに発展する危険性もある。そのため,本当に難しいケースのときだけ,充分に時間をかけて準備を整え,相当の覚悟をもって,障害の可能性を伝えて支援機関の利用を提案する方針にしている。3.2 研修シリーズの構成とカリキュラム開発する研修は,支援・対応ガイドを研修資料として用いることにしていたが,支援・対応ガイドの内容は多岐に渡っているため,標準的な研修時間である12時間に収めるのは不可能である。そこで,支援・対応ガイドの内容を「理解と接し方編」「訓練の支援と支援体制編」「就職活動の支援編」の3段階に分けて,段階的に研修を受講するシリーズとした。これは単純に支援・対応ガイドの内容をジャンルで分けたものではない。この順序で研修を受講する必要がある。なぜなら,後の研修で扱う支援は,前の研修で扱っている支援を実施していないと実現不可能なものが多いためである。すなわち,「理解と接し方編」で習得した支援を実現できていないと,次の「訓練の支援と支援体制編」で扱っている支援を実施しても効果がない。同様に,「訓練の支援と支援体制編」で習得した支援を実現できていないと,「就職活動の支援編」で扱う支援は実施さえも不可能である。研修を段階的に分けたことで,単発の研修では到達できないような高いレベルの内容を扱うことがで3.1 支援・対応ガイドと研修シリーズの基本方針支援・対応ガイドと研修を開発するとき,一般校での状況を踏まえて,以下を基本方針とした。⃝ チーム体制による組織的な支援を行う。⃝ 事後対応ではなく,予防の観点で支援を行う。⃝ 本人・家族と密接に相談しながら,一緒に考えていく。⃝ 本人・家族が周囲の訓練生に情報をクローズすることを望んだ場合にも対応する。⃝ 就職ができなかった場合でも,将来に道筋をつけた形で修了を迎えられるようにする。⃝ 専門的な知識が必要なときは,支援機関を頼る。ただし,これらの基本方針は,今すぐに実現可能な方針ではない。それぞれの訓練校での現状を踏まえつつ,少しずつ対応の幅を広げながら実現していくことを研修では伝えている。また,一般校は集団指導のため本人だけを支援するのは難しい。そのうえ,本人には診断が無いケースが多いのに,専門的な情報は診断のあるケースでの個別か小集団の支援方法ばかりで,一般校にマッチングした情報が少ない。このような一般校特有の悩みへの回答として,配慮訓練生の行動の特徴(以降「行動特性」とする)に着目し,集団指導と個別指導の場面に分けて支援を検討する方針にしている。すなわち,集団指導のときは,周囲の訓練生(さらに本人)に気づかれない全員対象の支援を行い,本人が他の訓練生と異なる扱いになるのを回避する。一方で,周囲の訓練生の目が気にならない個別指導のときは,本人の行動特性にあわせた支援を行う。さらに加えて,最初は手厚い支援で本人が迷わず作業できるようにし,作業が定着したら,段階的に支援を外し,最後には自立して仕事ができるように導いていく方針にしている。そのため,大きな支援ではなく,小さな支援を多数用意することを基本としている。なぜなら,小さな支援の方が本人の状況に合わせて段階的に外しやすいからである。3.研修シリーズの開発

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