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図2 配慮訓練生の在籍中の診断状況なお,この調査は指導員の主観的な判断によるもので,スクリーニングを利用して配慮訓練生かどうか判断したわけではない。あくまで,訓練指導をする上で,従来の指導方法で対応できるケース(例:学力が低い,反抗的な態度)とは異なる,本人を理解するのが難しく対応方法を見いだせない訓練生をカウントしている。だが,医学的に障害に該当するかどうかは別にして,コミュニケーションや社会性の課題を抱える訓練生が一定数在籍していることは明らかである。また,研修に参加した指導員(学卒者向けの訓練担当以外に,離職者向けの訓練担当,機構外の指導員を含む)に聞いてみると,「配慮訓練生の在籍割合は1割程度という印象を持っている」という回答が最も多く,現在ではより増加していると思われる。2.2 配慮訓練生の診断の有無支援・対応ガイドを開発するにあたって,50名を超える配慮訓練生について詳細な調査を行ったところ,在籍中の診断の有無は図2のようになった。図2から,診断がある配慮訓練生は3割程度で,そのなかで障害者手帳を所持している配慮訓練生は非常に少ないことがわかる。また,多くのケースで本人や家族が障害の可能性のあることに気がついていない。そして,図2には示されていないが,一般校からの提案で,訓練が修了した後に障害者手帳を取得したのはわずか2名だけである。-13-すなわち,職業訓練の現場では,(医学的に障害に該当するかどうかは別にした訓練上の)配慮訓練生を把握するには診断の有無では不十分であり,さらに,訓練期間中に障害者手帳を取得する方向に支援するのが難しいことがわかる。2.3 一般校で対応するときの課題これまでに,一般校ではクラスで数名程度の配慮訓練生が在籍し,しかも配慮訓練生の7割ほどが診断がない状況ということを述べた。さらに,本人には障害の可能性の自覚がなく,指導員から見て特別な配慮が必要だと感じるケースが多い。障害者向けの職業訓練コースは,障害の診断があることが前提となっているため,一般校とは状況が大きく違う。そのため,障害者向けの職業訓練コースで行われている手法を,一般校でそのまま使うことは難しい。ここで,一般校ならではの配慮訓練生に対応するときの主な課題について整理する。一般校で配慮訓練生への対応を考えた際に生じる悩みには,次のようなものがある[9]。⃝ 専門知識を有する職員がいないし,本人から診断に関する情報提供もない状況で,配慮訓練生として扱うことへのとまどい。⃝ 配慮訓練生の行動が,性格によるものなのか障⃝ 障害の可能性の自覚がない本人に,障害の可能性があることを,どのように伝えればよいのかわからない。⃝ 一般校の職業訓練は集団指導で実施されているため,障害の可能性の自覚がない本人だけを他の訓練生と違う扱いをするのが難しい状況での対応方法がわからない。⃝ 職場実習先や志望先企業,就職先企業に対して,どこまで情報提供をしてよいのかわからない。⃝ そもそも支援機関とのパイプがなく,どこに相その要因を考えると,専門的知識の不足,指導員の本人に対する理解不足,適切な相談先の不在,支援のテクニックの欠如などが挙げられる。害の可能性によるものなのか判断できない。談してよいのかわからない。

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