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ミュニケーション活動(以下,「CC」という。)がある。本研究では,障害者の社会的自己実現へ向けた指導の一環に,CCの要因を利用した教材で,表現力を育成する。課題は「Webサイト制作」としPCのナレーション機能を利用した。Webコンテンツに手作り動画制作を取り入れた課題の提案を報告する(1)。コミュニケ―ションは,社会生活に必須のものであるが,多くの精神障碍者にとっては特に負担となっており,社会復帰を試みる際の大きなハードルになっている。我が国では,障害のある子どもの一人一人の教育的ニーズに応じる「特別支援教育」が平成19(2007)年度から本格的に始まった。この制度改正により,今までの特殊教育では支援の対象となっていなかったLD,ADHD,高機能自閉症の子どもたちが支援を受けられるようになったのである。更に我が国では,特別支援教育に制度を変えると同時に「教育的なニーズ」という概念を導入している。「教育的なニーズ」の概念については欧州諸国や国際機関等においても活発に議論が交わされ,一人一人の子どもの個別のニーズに対応した教育が目指されている。ニーズについては,本人の感じる主観的なニーズと専門家などが考える客観的なニーズがあり,近年は民主主義的な観点から,本人の感じる主観的なニーズが重要視されるようになってきている。英国の教育制度におけるSpecialEducationalNeeds「特別な教育的ニーズ」のある子どもは,「障害のカテゴリーによらない本人の『学習の困難さ』に必要な『特別な教育の手だて』のある子どもにある」と定義されている(2)。本研究では,精神障害者の社会的自己実現へ向けた指導の一環に,CCの要因を定義した教材開発を行い,表現力を育成した。課題には様々なレベルのものを準備し,PCのナレーション機能を利用した。生徒自身のナレーション課題の完成に向けた指導事例を報告する。4.2 障害者教育の背景内閣府による平成26年度障害者白書による,基本的統計から,身体障害,知的障害,精神障害の3区-8-分で障害者数の概数を見ると,身体障害者393万7千人,知的障害者74万1千人,精神障害者320万1千人となっている。これを人口千人当たりの人数で見ると,身体障害者は31人,知的障害者は6人,精神障害者は25人となる。複数の障害を併せ持つ者もいるため,単純な合計数にはならないものの,およそ国民の6%が何らかの障害を有していることになる。なお,この数値の身体障害者及び知的障害者は,「生活のしづらさなどに関する調査」によるもので,精神障害者については,医療機関を利用した精神疾患患者数を精神障害者数としていることから,一過性の精神疾患のために日常生活や社会生活上の相当な制限を継続的には有しない者も含まれている可能性がある。また,「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(厚生労働省)は,在宅の障害児・者等(これまでの法制度では支援の対象とならない方を含む。)の生活実態とニーズを把握することを目的とした調査であり,全国約4,500の国勢調査の調査地区内に居住する在宅の障害児・者等を対象としており,これまでの「身体障害児・者実態調査」及び「知的障害児(者)基礎調査」を拡大・統合して平成23年12月に実施したものである(4)。精神障害者は職業に就いても,継続が難しく退職を余儀なくされた場合や,発症し社会生活が困難となる者も少なくない。東京障害者職業能力開発校では,「学校から職場への橋渡し」を念頭に平成20年度から精神障害者の受け入れを開始し,きめ細かい個に対応した訓練を行い,成果を上げてきた(5)(6)。4.3 ビジネスキャリア育成モデルキャリア形成および能力開発を推進するためには,戦略を共有し,価値を共創するCCの観点から,3つの基本要素,何を=「価値」,だれに=「対象」,どのように=「戦略」をより明確にしておく必要がある。この3つの要素は,以下に述べるインサイトとアウトサイトの両面のコミュニケーションを円滑に進めるための最も重要な要因となる。日常のあらゆる活動(問題)において,自らその

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