2/2017
5/60

2016年度の労働災害統計によると,労働災害の死亡者数が928人であった。これは,1972年に労働安全衛生法が公布された段階での死亡者数5,631人から比較すると大幅に減少している。現在の事業場における安全はゼロ災運動,KY活動,ヒヤリハット,リスクアセスメントによる機械・設備の安全化,OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)等により確保されている。その中で安全に関わる労働者は経営層から一般労働者まで全ての階層に存在している。これらの労働者を育成する離転職者訓練,在職者訓練,学卒者訓練を実施する際に安全は不可欠であり,職業訓練指導員,事務職,訓練生の全ての立場において日々,取り組むべき重要な仕事の1つである。今回の特集では安全に関する公的の教育訓練機関における実践事例と安全教育に関する考え方について紹介する。厚生労働省から都道府県労働局に2016年10月に「安全衛生教育及び研修の推進」が通達されている。この通達は各事業場で「安全衛生教育等推進要綱」に基づき労働者の各階層に対する教育および機械設備の安全化を促進するための設計技術者等に関する教育など幅広い内容を行うように求められている。また,2014年度に厚生労働省から関係事業者団体等の長に「設計技術者,生産技術管理者に対する機械安全教育に係る教育について」が通達されている。-3-さらに,OSHMSの国際規格であるISO45001が発行に向けて関係機関で議論が行われている。以上のことから在職者訓練および職業訓練指導員研修等で安全に関するコースは高いニーズがあることが予想できる。そのため,安全に関係する知識・技術を持ち訓練の実施またはコーディネートすることができる指導員の養成が求められている。本特集では国内における公的の教育訓練機関および大学などで実施されている安全に関する教育訓練の実践事例を特集することにより,教育訓練の現状と今後の課題などについて報告する。さらに,安全を勉強する人のための1つの資料として供したい。本特集の内容は職業能力開発総合大学校から「初学者の旋盤作業実習における安全対策教材に関する研究」。中央労働災害防止協会は「安全衛生教育の概説とリスクベースアプローチを踏まえたこれからの教育の力点」。長岡技術科学大学は「長岡技術科学大学における社会人向けシステム安全の教育」について報告されている。杉本旭博士による「リスクアセスメントの目的と停止カテゴリについて」ではリスクアセスメントの本来の考え方と安全の責任について報告されている。最後に本特集に投稿して頂きました長岡技術科学大学名誉教授 杉本旭氏,長岡技術科学大学教授 福田隆文氏,中央労働災害防止協会 森田晃生氏,元職業能力開発総合大学校准教授 鈴木重信氏に心から御礼申し上げる。職業能力開発総合大学校 中村 瑞穂1.はじめに2.特集の目的と内容安全に対する取組みの特集によせて

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る