2/2017
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全国の地方都市の中でも有数の人口と工業地帯を背景とした恵まれた環境と同時に,震災や原発事故収束の真っただ中に立地するセンターは,設置されまもなく60年近くになりハード面は老朽化施設であるが,国や地域の産業振興施策と相まって,ものづくり人材の確保・能力の底上げなどの人材育成に応えられる人材育成環境を一層整備し,持続可能性(注4)にチャレンジするセンターとして地域産業等からの社会的要請条件は整っていると考えられる。こうした視点にたって,地域のものづくり人材育成をリードし,地域産業の発展に寄与していくためにどのように応えていけばよいか,小規模センターが,その役割を実践する実験の場(モデル)となると考える理由は以下のとおりである。(1)地方都市に立地するセンターのモデルとして急速に人口減少が進む中で,震災や原発事故という突発的災害に起因し,結果として福島県沿岸地域の人口が集中するコンパクトシティの先駆けともいえる地域に立地することになった。一方,人的・施設設備的に小規模なセンターが離職者訓練と在職者訓練とを機動的に実践し,ものづくり人材の育成を通じて地域に影響力を高めていくための試行錯誤の意味は大きいと考える。(2)先導的訓練の実施のために第1に,ポリテクセンターの役割は,規模に関わらず,地域を先導する職業能力開発の実施・提供にあることに変わりはない。当事者である当センター職員の努力は無論であるが,限られた人員・設備に頼ったコースだけでは事業の縮小均衡を助長するだけであり,地域の産業界・行政機関等が望んでいることではない。技術革新や社会的要請に対応した離職者訓練や在職者訓練の先導的役割を担うためには,全国組織としての機動性を活用する以外に方法はない。第2に,地域の雇用失業情勢や人材育成ニーズに-44-応じた,在職者訓練と離職者訓練のバランスのとれた機動的展開である。このためにはコンパクトであっても機能的には両事業を並行して実施できる最低限の施設設備環境が必要である。(3)大規模施設のサテライトセンターとしてセンターは,関東の経済圏に立地している。ここ数年の高速道路網整備により関東地域とは時間的に相当短縮され,鉄道よりも高速バス利用者が増加している要因である。例えば,関東能開大とは約150Km。圏央道(首都圏中央連絡自動車道)が整備され高度ポリテクセンターとも成田経由で230kmで結ばれた。限られた人的・設備的な範疇を超えて,福島県沿岸地域から茨城県北部地域をエリアとする人材育成ニーズを発掘し応えていくためには,福島県内施設との連携はもとより,関東能開大や高度ポリテクセンターなど大規模施設のサテライトセンターとして,この地域のものづくり人材育成ニーズに応えていきたいと考えている。(4)ものづくり人材育成の団体・企業のパートナーとして,地域のペースメーカー(調整役)として地域産業界との連携のためにパブリシティ(情報提供)の強化と併せて,人材育成ニーズの発掘を一層強化しなければならない。関係行政機関の施策との連携を図り,関係事業主団体や個別企業の人材確保や技術革新に対応する技術・技能の底上げのための頼られるパートナーとして信頼性を高めていかなければならない。また,関係機関の強みを生かすため実務的な地域の調整役(ペースメーカー)を担っていかなければならない。「平成28年度高齢社会白書」によると,日本の人口は2060年に8,600万人となり,平均すると年間約90万人が減少していくと推定している。2060年はこれから40年後,センターが設置されて100年後になる。一方,IoTやAIなどの技術革新の進展は,産5.まとめ6.むすびに

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