2/2017
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災地域の除染作業や福島第1原発(1F)の廃炉関連事業者の拠点,復興住宅や原発避難者のいわき地域への新たな住宅新築需要などが主要因といわれているが,復興需要はピークを過ぎたと考えている企業が多い。企業動向(5)は,経営状態が「良い」「悪い」両者が増加し,業種別では宿泊業・飲食サービス業は悪化,製造業は「良い」「悪い」の両者が増加。経営状態が「良い」「変わらない」と回答した企業では「復旧・復興関連需要の継続」「受注量・売上増加」「企業努力」と回答。「悪い」と回答した企業が増加している建設業は「受注量,売上の減少」「人手不足」の要因,医療福祉は「介護報酬の改定」「人手不足」の要因をあげている。今後の見通しが「良くなる」と回答した企業は「受注量・売上増加」「企業努力」「新規事業立ち上げ」,「悪くなる」と回答した企業は「復旧・復興関連事業の減少・終了」をあげている。また,16%の企業が「原子力損害補償」を受けており,60%の企業が原発事故の影響(売上の停滞・減少,人手不足,人件費の増加)が経営に影響を及ぼしていると答えている。特に人手不足と答えている業種は「情報通信業」「医療福祉」「建設業」である。(2)産業振興・再生と人づくり環境国(復興局)・県・関係市町村は,「イノベーション・コースト構想研究会」を設置し,福島県浜通り地域の新たな産業基盤の構築や広域的視点でのまちづくりを目指している。構想の主要プロジェクトとしては,①国際廃炉研究開発拠点 ②ロボット開発・実証実験(楢葉町にモックアップ試験施設が完成) ③国際産学連携拠点 ④新たな産業集積 ⑤インフラ整備を掲げている(6)。また,小名浜港(注3) を石炭等のエネルギー調達港湾拠点港として整備(写真9参照),浮体式洋上風力発電の実証実験,火力発電所の新増設(勿来・広野火力発電所の石炭ガス化複合発電(IGCC)設備の増設など)も進められている。いわき市は復興に向けたイノベーティブな「ゲートウェイ」を担うとして,「廃炉研究会」「いわきロボット研究会」「いわき地域風力発電ものづくり産-40-業研究会」のほか,「いわきバッテリーバレー構想具現化検討研究会」「再生可能エネルギー・スマート化研究会」などで検討を進めている(7)。一方,ものづくり人材育成の環境は,「いわき明星大学(科学技術学部は廃止し,看護学部を新設)」「東日本国際大学」があるが理工系学部はなく,工学系では福島高専と工業高校が若年者の人材育成機関である。ただ高校卒業生の過半数は関東地域に進学・就職先として流出しており,地元企業の人材確保が課題となっている。教育訓練施設としては,県立テクノアカデミー浜(南相馬市原町区),認定訓練施設いわき職業訓練協会「いわき市共同職業訓練センター」(いわき市),いわきコンピュータ・カレッジ(いわき市)が設置されている。このほか,パソコン・介護・医療事務関連の民間教育機関はあるものの決して多くはなく,このような地域の教育環境をみれば,ものづくり現場の技術者・技能者の育成を担うセンターに課せられる役割は高くならざるを得ない。東日本大震災により被害を受けた本館棟及び実習棟は取り壊され,本館棟は旧グラウンドに新たに整備されたが施設は相当縮小された(写真10,11参照)。昭和35(1960)年設立当初は,板金科・配管科・左官科・活版印刷科・塗装科の5科で常磐炭鉱の離職者訓練を開始し,その後,機械科・電工科・建築写真9 小名浜港の港湾整備(石炭荷揚げのため の人口島と3号ふ頭を結ぶ橋梁工事)4.センターの取組の現状・事例

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