2/2017
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か所の仮設住宅が設置された。除染が完了したことなどに伴い,帰還困難区域が徐々に解除され行政機能を元に戻しているにもかかわらず,住民の帰還率は高まっておらず,いわき市内の仮設住宅と元の居住地を往復している,あるいは,2世帯に分離するような世帯もあり,仮設住宅はほぼ6年前と変わっていない(写真6~8参照)。平成27(2015)年に実施された国勢調査の速報値(4)によるといわき市の人口は,平成7(1995)年の36万人を境に減少し平成22(2010)年は34万2千人であったが平成27(2015)年は34万9千人で7千人増加している。全国的には人口が減少し,福島県全体でも191万人で5年前より11万5千人が減少しているにも関わらず,いわき市の人口は増加している。国勢調査結果では,避難指示が出された12市町村の人口は,前回(2010)は205,900人,今回(2015)は118,091人で約9万人減少し浪江町,富岡町,大熊町,双葉町の人口は0(ゼロ)となった(注2)。いわき市の人口は今回7千人増加したが,前回(2010)は1万2千人減少しており,原発被災地からの転入者が2万人程度増加したことによって結果的に7千人増加したものと考えられる。5年後の人口予測は難しいが広域的に人口減少傾向は間違いないものの,いわき市の都市中心部に集中する傾向は続くと考えられる。ちなみに,東北6県の人口の多い都市順は,①仙台市(108.2万),②いわき市(34.9万),③郡山市(33.9万),④盛岡市(29.7万),⑤福島市(29.4万)の順であり,同市の人口は東北6県の都市では仙台に次ぐ人口を有する都市である。原発避難地域から同市内に移転し,企業活動を開始している事業所もあるので,関係商工会などを通じて情報の収集と提供に努めていく必要がある。(1)概要震災時は,津波・地震・原発事故に伴い,製造業関連企業も,工場の浸水・地盤沈下などのほか,新規採用者がいわき地域への配属に伴う採用辞退など-39-が相次いだと聞いている。製造業のほか農林水産業への放射能汚染の風評被害なども続いており,その影響は甚大である。震災後6年が経過するが,いわき地域の求人倍率は平成27(2015)年12月に1.84倍(福島県全体では1.50倍,全国平均は1.27倍),平成28(2016)年10月に1.71倍(福島県全体では1.42倍,全国平均は1.40倍)と現在でも非常に高い。原発被写真6 原発事故避難者の仮設住宅(その1)写真7 原発事故避難者の仮設住宅(その2)写真8 帰還困難地域(富岡町)の復興を願い 同地区の桜の名所をイメージしたJRいわき駅前のイルミネーション3.産業界の復興状況と人づくりの課題

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