2/2017
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-32-で回転させ動作を確認した。この段階まで発案してから約2日。「あれを試してみよう,これならどうだ?」を繰り返した。程なくして,もう一人の開発者飯嶋君も興味深いテーマなので一緒にやりたいとのことで合流。そこからさらに2か月間で様々なディスカッションを行い,試作機第1号が瞬く間に完成しと,非常に楽しい時間であったのを覚えている。前稿[1]で述べた“無弦チェロ”にしてもそうであったが,趣味と実益を兼ねたテーマを与えられた学生は動きが速いのである。3.2 制御部システムの構築3.2.1 制御部システムの概要図3にヨーヨー型電子楽器「轟」のシステム構成を,図4には電子楽器の全景を示す。図3:ヨーヨー型電子楽器のシステム構成図4:ヨーヨー型電子楽器の全景3.1 発案から試作までの裏話そもそもこの電子楽器を発案したのは,筆者の研究室恒例の“コーヒーブレーク”のひと時であった。新しいアイディアの多くはくだらない会話をしているときに生まれ,それを実現するためのフットワークの軽さが発明を生むケースがある。開発者の一人である星野君は,高校時代よりヨーヨーパフォーマーとして競技大会に出場する腕前であった。本当は全く別の卒業研究テーマを与えていたのだが,たまたまコーヒーブレーク中にヨーヨーパフォーマンスという人並外れた特技があることを知り,そのパフォーマンスを目の当たりにして,この能力をそのままにしておくのは勿体ないと思ったことから「ヨーヨーを電子楽器にしてみないか?」と誘った。その場でディスカッションが始まり,ヨーヨーの回転や動きを検知するセンサを積むにあたり,まず問題になったのが,情報をどうやって伝送するか?ということであった。ヨーヨーは回転するので,センサの情報を音の情報に変換するためには,「ヨーヨー自体が音を発する」か,「ヨーヨー内で検知した情報を無線通信する」のどちらかの手段しかない。もしヨーヨー自体が音を発する仕様を考えた場合,センサ,マイコン,バッテリ,アンプ回路,スピーカなどを内包するものを作ればよい。つまり内部ですべてのシステムが完結している状態である。しかしながら,回転をぶれさせずにヨーヨー内に市販パーツを複数配置するのは至難の業である。さらにヨーヨー自体が重くなり,ヨーヨーパフォーマンスにも影響が出てしまう。そこで,ヨーヨー内に配置するのは,センサ,バッテリ,センサ情報を無線通信するユニットにとどめることにした。さらに問題点となったのが,無線通信用のICは,高い加速度を持つ回転体内で,「正確に動作するのか?」ということであった。ZigBee規格で無線通信できるXBee シリーズ2を,ボール盤の先端に偏心するように装着,最高速の3000rpm3.ヨーヨー型電子楽器「轟」の開発

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