2/2017
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前稿[1]では,図1に示すような電子楽器の本質を明示し,“電子楽器とは何であろう?”という問に対しての本質的な答えは“人間の何らかの動作を電子回路により音へ変換する器具”であると述べた。つまり,センサによって何らかの人間の動作を信号に変換し,マイコンに入力,マイコンではそれを音の情報に変換して出力すれば良いわけである。また,以下に列記する理由から,“誰でも新楽器創成時代”が到来したと述べた。理由1:インターネットショップのおかげでマイコンや各種センサが非常に安価に,かつ,簡単に入手できるようになったこと。理由2:マイコンやセンサの使い方を学習するとき,それについて書かれた書籍や,インターネット上の記事などに簡単に触れられること。理由3:3Dプリンタや,NCルータ,レーザーカッターなどのいわゆるデスクトップファブリケーションが購入しやすくなったり,市民工房に設置されたりと加工環境やインフラが整いつつあること。それに伴い筐体設計や製作に関わるCAD・CAM・CAEなどの技術に関しても,情報に触れられる機会が増え,アプリケーション自体も簡単化されつつあることから,随分と一般的になってきた。そこで本稿では前稿に引き続き,小生研究室にて開発してきた新しい電子楽器について紹介する。第2回目として,2012年に開発された,ヨーヨー型電子楽器「轟」[2][3]について述べることにする。-29-図1:電子楽器のシステム図ものつくり大学 三井 実2.1 ヨーヨーとはご存知の方も多いと思うが,念のためヨーヨーを辞書で引いてみると,「玩具の一種。二個の饅頭(まんじゆう)形の木片をつないだ軸にひもを巻きつけ,ひもの先端を持って吊り下げ,回転の反動により上下させて遊ぶもの。(三省堂「大辞林 第二版」より)」とある。ヨーヨーの基本的な情報は「総合ヨーヨー情報サイトGIOY」[4]が非常に詳しいウェブサイトのため,以下ヨーヨーの歴史を抜粋する。ヨーヨーの起源は紀元前1000年頃の中国や,紀元前500年頃のギリシャなどというのが主流な説のようである。また,時は流れて,1928年には現在でも続くヨーヨーメーカであるダンカン社が設立され,現在のヨーヨーのひな形が完成する。さらに1950-60年代,アメリカでダンカンヨーヨーがブームになったようである[4]。さらに時は流れて,筆者の小学生時代(1980年代後半)には某飲料メーカのおまけとしてヨーヨーが大流行した(同年代の方々は目を細めて昔を思い出すことであろう)。赤いジャケットを着たお兄さん1.はじめに2.ヨーヨー型電子楽器開発の背景〜ヨーヨー型電子楽器「轟」の開発〜マイコンを用いた電子楽器開発記②

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