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全やそのための装置の必要性はもとより,state of the artとされるレベルの安全(現在の技術・知見を結集して行い得るレベルの安全)が国際市場では求められていること,しかし,そのための投資は,事故による経営への負のインパクトと比較して十分価値のあることを説明することが,納得して安全への投資をしてもらうために必要となる。生産現場の安全化についても同様で,事故から社員を守ることの倫理的な意味だけでなく,事故による生産停止など考えると,安全への資源の投入は,価値あることであることを説得しなければならない。これらのために必要な経営やマネジメントに関する知識は,工学部でオプション的に勉強するだけでは足りないと考えている。以上述べてきた弊学におけるシステム安全の教育であるが,これは社会ニーズと合致しているのであろうか。入学者数の推移を表1に示す。本専攻は一学年の定員は15名であり,定員をほぼ充足している。また,いくつかの会社が複数の安全担当社員を入学させている。この事から,修了生は会社で期待に応えていると考えられ,社会ニーズと乖離していない教育を行っていると自負している。また,厚生労働省が平成26年4月に「機械設計技術者,生産管理技術者に対する機械安全に係る教育について」(基安発0415第3号)で教育カリキュラム(電気・制御技術者の場合で40時間)を示した。本専攻の教育内容を基盤としている安全技術者の資格であるシステム安全エンジニアの有資格者は,この-21-[1] ISO/IEC Guide 51:2014 Safety aspects – Guide-lines for their inclusion in standards (JIS Z 8051:2015 安全側面-規格への導入指針)[2] ISO 12100:2010 Safety of machinery -- General principles for design -- Risk assessment and risk reduction (JIS B 9700:2013 機械類の安全性-設計のための一般原則-リスクアセスメント及びリスク低減)カリキュラムに示された全項目に関して十分な知識を有すると見なして差し支えないこととされた(基安安発0415第1号)。このことからも,本専攻が提供している授業科目大系は社会の要請に合致していると考えている。本専攻の内容は上記の通りである。ごく簡単にまとめれば,リスクアセスメントから安全方策,使用上の情報までの一連の流れを理解できるようにしたことと,マネジメントまでを一体としてカリキュラムを組んでいることである。幸い,毎年多くの安全を目指す現に働いている方々が入学してきている。副次的ではあるが,非常に大きな効果が生み出されている。それは,様々な業種の組織から集まっているので,授業中,授業後の議論が活発で深いことであり,相互研鑽になっている。これは,本専攻の他ではなかなかできていないことであると考えている。安全は,一方で,製品開発の足かせといった理解がされているが,それは国内市場を見て,かつ事故が起こったときに受ける損害を見ない(想定しない)議論の結果である。実際には,国際市場には安全があって初めて上市できるという現実,事故を起こさないという気構え,国際的なルールを理解して安全を製品や職場に作り込むという考えと,それを経営層にも説明できる能力を学生に修得してもらい,修了した彼らを通じて,その会社の安全が高まること,さらに間接的ではあるが,社会全体の安全レベル向上に寄与することを目指している。欲張ったことであるのは承知しているが,一歩ずつ前進したいと考えている。関係各位からのご鞭撻をお願いしたい。表1 入学者数推移<参考文献>5.社会ニーズ6.まとめ

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