2/2017
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スメント),対策を考え,可能な対策は機械に組み込むことを基本とし,機械設計ではどうしても対策できない危険は,残ってしまった危険(残留リスク)として使用者に伝える(3ステップメソッドによるリスク低減)という仕組みを構築してきた。その結実が,欧州地域での規格であるEN規格であった。これを見た世界各国が欧州の規格から国際規格に取り込もうとした結果,ISO12100を中心とする国際的な機械安全規格の体系ができあがってきた。安全性向上のためには,「安全教育と人の注意力の活用」と「機械側での安全対策」をうまく融合することが大切である。ただ,従来のわが国では,設備対策については,上述のようにリスクアセスメントで危険源を見つけ対処するという側面よりも,経験的な面や法令に書かれていることを行っているかについての確認の面が強かった。また,対策も,国際安全規格の示す本質的安全設計,ガード及び保護装置での対策を優先し,それでも残った危険性に対しては安全上の情報として使用者に提供する,という仕組みが十分に理解されていなかった。それでは,「安全教育と人の注意力の活用」,「機械の安全対策の実施」とその基礎の「リスクアセスメント」をうまく組み合わせて活用するには,何を学べばよいのか。弊学の授業について記述する前に,国際規格の考え方について触れてみたい。安全においては,ISO,IEC等の国際規格の役割は大きい。もち論,国際規格の第一義的な役割は,国際的な流通のためであるが,流通許可条件として国際規格は,安全の水準を担保する役割も担っている。国際規格であるISO,IECにおいて,安全を規定する際には,ISO/IEC Guide 51[1]を基に行う。従って,このガイドに書かれている事を理解することは,国際規格を理解する上でキーとなる。ISO/IEC Guide 51[1]では,(1)安全をリスクで考えることにしている。箇条6.2.1で「全ての製品及びシステムにはハザードが含まれており,このため,あるレベルの残留リスクを含んでいる。」と述べて-18-いる。つまり,リスク0(絶対安全)は理想であるが,現実できないという事実の中で,安全を確保した製品の流通の実現を目指している。図1は,このガイドに示されている安全検討のためのフローである。さて,リスクで安全(リスクの許容)を判断する以上,リスクを見積もることができなければならない。従って,リスクアセスメントの修得は必須である。また,更にその前に危険源を同定できなければならない。更に,同定した危険源に関連するリスクを許容できるレベルまで低減することが求められているのであるから,リスク低減手法を知らなければならない。リスク低減手法(保護方策)は,設計では3ステップメソッドに従うこと,使用側では設計による準備された使用上の情報を基に,対策をとることと示されている(次の枠内及び図2)。なお,時に誤解されていることがあるが,国際規格は全ての安全対策をハード的に行うことを求めてはいない。また,それは現実無理である。図1 ISO/IEC Guide 51[1]に示されるリスク アセスメントとリスク低減の反復プロセス3.国際規格での安全の定義とそのための方策

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