2/2017
17/60

現場の管理監督者や,機械設備,化学物質等の専門家など,全員参加で行うことが重要である。特に,第一線の作業者については,対象作業について一番熟知していることから,絶対に外せない存在となる。しかし,第一線作業者の参加には,もう一つ大切な意義がある。それは残留リスク対応の履行について合意を得るということである。リスクアセスメントは事業者の責任として実施し,組織の状況や社会の一般的な通念を考慮して,コストも加味しつつ,できるだけハード的な対策を進める必要があるが,どうしてもソフト対策にならざるを得ない部分については,実際に作業に当たる人にその履行について合意を得ることが非常に重要となる。要は「ここまで対策したけど,リスクが残ってしまった。今後も改善の努力をするので,申し訳ないけど,現状では気をつけて作業してほしい」というわけである。ここでしっかりと合意が得られるかが,成否を左右すると言い切ってもよい。例えば,保護具着用のルールや作業手順を無視して災害に遭うケースは,この合意がされていないことが大きく影響していると筆者は考える。事業者や管理監督者が,残留リスク対応を作業者に一方的に押し付けるのでは効果が上がらない。-15-特に昨今,社会がグローバル化され,競争が激化する中,かつては部下の面倒見を丁寧に行っていた管理監督者が余裕をなくしたり,複数作業が一人作業に変更されたり,多品種少量生産で設備も高度化したりする中で,作業者一人一人の力量や振る舞いは今まで以上に高いレベルが要求されるようになっている。リスクへの対応も同様であり,日常的に実践してもらうために,作業者の合意を得ることがいかに重要かはお分かりだろう。3.5 今後の教育の力点安全衛生関係法令で求められる教育は,過去の労働災害の一因となっていることの裏返しなので,今後も実施していくことが必要である。それ以外の部分では,以下のように,OSHMSやリスクアセスメントといったリスクベースアプローチを軸にテーマを設定していくことが成果に直結しやすいと考える。① OSHMSやリスクアセスメトに関する教育② リスクアセスメントと密接に実施することで実効性が上がる日常職場活動に関する教育③ 残留リスクを踏まえた作業手順教育④ 残留リスク対応として,社内資格制度や許可制度に関する教育上記は,前項で紹介した自主的な教育テーマと大きな差はない。しかし,リスクベースアプローチを前提に,それぞれの関連性をしっかりと押さえて実施するのと,単発の教育として行うのとでは,教育効果が違ってくるだろう。「残留リスクを踏まえる」という部分も大きい。全体像が見えるようにして,必要性や有効性を強調することが大切である。また,安全衛生の基本はライン管理であり,階層別教育も併せて実施していくことが重要である。3.6 専門家の育成も重要安全衛生スタッフ等の専門家の教育も今後ますます重要性を増す。実は,安全衛生担当者に法令で義務付けられた教育はなく,どのような教育やキャリアパスを踏むのかは企業の主体性に任されている。表2 リスクアセスメントと日常職場活動

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る