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指導員の内田先生たんだよね。そんなふうに,みんなと見せ合う中で試行錯誤を重ねて,段々と完成度が上がっていきました。なので,ひとりで作業しても賞を取れるようにはきっとならなかったと思います。みんなのおかげもあってできた作品です。-今後エントリーする後輩にむけて一言(涌井)やっぱり自分で納得のいく作品を作って欲しいと思います。もちろん仲間と見せ合って,いろんな意見を参考にするのも良いのですが,最終的には自分で自分の作品に納得した上で応募をして欲しいと思います。それで受賞できなくても悔いることなんてないじゃないですか。それより納得のいく作品ができたってことを誇りに思えばいいんじゃないでしょうか。根気よく試行錯誤することで,納得のいく作品を作ってください。-例年,質の高い作品を応募していただいてありがとうございます。北海道は旭川技専も含めて受賞の常連となっていますが,その秘密を教えてください。秘密なんてないですよ(笑)特に変わったことはしていません。4月に入学してきたばかりの1年生が,制作を開始する7月の段階ではグラフィックソフトの基本的な操作しか学んでいません。そのため制作するにあたり,習得した事のできる範囲で考えてしまいがちです。しかし,発想したことは習得した事では表現できないことがあります。自分ができる範囲で発想するのではなく,発想した事をどうしたら表現できるかという考え方が必要だと最初に伝えました。発想するうえで情報が必要になるため,「技能」「技術」や「技能と技術」誌について調べ,そこから意味や趣旨など語句の書き出しを行いました。書き出した中から自分が表現したい語句は残し,その残った語句から連想ゲームをやってみます。例えば「技術」からは「腕」,「腕」からは「力こぶ」といった具合に,関連する言葉を最初はとにかくたくさん挙げて,そのあとで,出てきた言葉を並べて俯瞰してみます。そうするとやはりデザインと-59-して表現するにはそぐわないものも含まれているので,そういったものをそぎ落としていきます。次は,絞り込んだ言葉を,どのようにデザインとして表現するか考えます。それを「形」として表現するのか,「濃淡」として表現するのか,また「背景」にするのか「メイン」にするのか,その辺の力関係をどうやって表現するのか,また考えてもらいます。言葉から「形」なり「濃淡」なりが出てきたら,それらを組み合わせてラフを描いていきます。この段階で,例えば奥行きを出すためには,遠近法というものがあって,といったふうに様々な手法などを授業の中で紹介していきます。このように言葉ありきで考えていって,デザインを構成する要素すべてに自分なりに意味があるという状態にするので,最終的にはコンセプトにぶれがなくなると思います。-涌井さんの作品に対する選考員のコメントとして「コンセプトがデザインとしてちゃんと表現されている,伝わってくる」というのがありました。それは言葉そのものを徹底的に考えてからデザインの要素を作っていくというプロセスがあってのことだったのですね。最初に言葉をたくさん挙げると,デザインにしたときに要素を詰め込み過ぎたりしないのでしょうか。ありますね。でもデザインの中には空いている部分もやはり重要なので,せっかくひねり出した言葉でも,むやみに配置してはうまくいきません。例えば「のびのびとした」みたいなキーワードをコンセプトに掲げているのに,空間が少なく窮屈で,全4.指導者インタビュー

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