1/2017
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図9 筐体の外観図「FSR400SHORT」を採用した。3.2.3 筐体の詳細筐体の外観を図9に示す。筐体は指板に運指センサを取り付けられること,制御部やセンサ類を内蔵できること,蓋が開閉可能で回路のメンテナンスができること,チェロの演奏姿勢で演奏できること,それらを満たした上でできるだけ軽くコンパクトであることが求められる。さらに手に触れる部分はなめらかな曲面で,後から追加工や部品の後付けがしやすいよう平面の部分を設けるといったことを考慮し設計した。材質には薄くても強度のあるG-FRPを用い,コンパクトかつ内容量を確保している。製作は以下の順番で行った。①スタイロフォームとパテでマスタ型を手加工造形②マスタ型を3Dスキャナーにかけ3Dデータ化③データを3DCADで設計,反転し雌型データ作成④スタイロフォームをNC加工機で雌型を削り出す⑤削り出したパーツを組み立て,表面処理をして雌型を製作⑥雌型にG-FRPをハンドレイアップで張り込み⑦脱型し穴あけなど加工し,下地処理を行い塗装⑧部品を組み付け完成3.2.4 制御部の詳細制御部では各種センサからの情報を処理し,音程や音量など音情報を判断,それをMIDI音源に送信するためにMIDI信号を生成し出力する。電子楽器で一番求められるのはレイテンシ(操作に対するタイムラグ)が小さいことである。一般的に楽器において許容されるレイテンシは20msまでと言われ,これ以上のタイムラグがあると演奏が成立しない。さらに動きの激しい演奏や繊細なタッチを求める演奏家にとっては20msでも遅いという。そこでレイテンシを小さくするため擦弦部に入力のある弦しか運指部の値を読まないようにするなど無駄を省くための工夫をした。マイコンには入門用Arduino UNOのポート数が強化されたArduino MEGAを採用した。-55-3.2.5 音源部の詳細音源部には誰もが扱いやすく市場に流通している汎用性の高いものが向いていると考え,電子楽器の統一規格である「MIDI(Musical Instrument Digital Interface)」を採用した。MIDIは現在出回っている電子楽器のほぼ全てに対応する規格で,異なるメーカーの電子楽器であっても連動して演奏・操作することを可能とする目的で生み出された。対応する周辺機器が多く,また参考文献なども入手しやすいため開発環境としても向いている。楽器としては,MIDI端子を設け,MIDI信号を外部に出力するまでを行い,実際に聞こえる音を出力する役割は外部のMIDI音源とスピーカなどが担う構成にした。また使用したMIDI音源は価格やサイズ,音種の多さからRoland社のSD-20を使用した。前節で述べた,運指部,擦弦部,筐体,制御部,4.無弦チェロの対外的発表について

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