1/2017
55/64

図4 チェロの電子化のために必要な部分図5 無弦チェロのシステム図節で述べた問題点の根本的な解決は難しい。2.5 無弦チェロ開発のねらいチェロの問題点を解決すべく,本研究開発[12]では演奏者を支援するため負担が少ないチェロの開発を目的とした。具体的には小型で軽く持ち運びや維持管理がしやすく,演奏する場所や時間の制限が少なく,コストが低く始めやすく続けやすい楽器の開発を目指した。またこの開発を通してチェロ演奏者数の増加を期待し,音楽業界の文化的・経済的発展にも寄与すべく,プロダクト化を視野に入れ,多くの人に親しまれるような楽器の開発を目指した。根本的にチェロの問題を解決するには原因である弦を無くすことが最も効果的であると考えた。そこで本研究開発では,弦による発音機構を持たないチェロを開発する。弦を代替するため,演奏動作をセンサで検知,電子的に音声を生成,スピーカなどから音を出力する電子楽器としてチェロを再現するアプローチを試みた。そして,この楽器を「無弦チェロ」と名付けた。3.1 チェロの電子化に必要な要素ここではチェロの電子楽器化に必要な機能的要素を挙げ,それぞれについて検討していく。まずは以下に電子チェロに必要な要素を挙げる。(図4参照)・運指部:左手で押さえ音程を調整する・擦弦部:右手で持つ弓を検知,音量や響きを調整・筐体:楽器本体であり制御用回路などを内蔵する・制御部:各センサから情報を受信し送信信号を生成する回路部分・音源部:制御部からの信号を実際の音として出力するための部分3.2 無弦チェロの設計と作成前項で述べた要素から,無弦チェロの構成は以下のような設計指針を設定した。また以下の部分をまとめた構成を図5に示し,以降の項で詳細を説明する。-53-【擦弦部】 ・レバー型で各弦独立の可動板 ・圧力センサを用いて弓の圧力を検知 ・下方向の圧力のみを検出し試奏する【運指部】 ・センサを加工しより細くしたものを使用 ・ネックを細くし,曲面で構成して演奏性を向上【制御部】 ・ マイコンを用いてセンサからの信号を,MIDI信 ・アナログ検出を少なくしレイテンシを抑える【筐体】 ・ G-FRP(ガラス繊維強化樹脂)で薄く造形し ・なめらかな曲面で構成する ・追加工や部品の後付けがしやすい構造にする号に変換しMIDI音源に出力容量を保ちながら軽量化3.無弦チェロの製作

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る