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ものつくり大学 三井 実-49-なしに演奏される楽器)に比べて大変便利な特長である。さらに録音について,アコースティック楽器はマイクを立てないと録音できないが,電子楽器は信号ラインの出力を録音機やアンプに接続すれば簡単に音を録ることができるため,レコーディングも簡単に行える。また,パッドにより演奏を行うKORG 社製の「KAOSSILATOR」[6]や,宇田道信氏が発明・開発した円筒を音階を選びながら演奏する「電子楽器ウダー」[7],オタマジャクシをモチーフとしたデザインの明和電機「オタマトーン」[8]は,新たな操作感や新しいデザインなどの観点から,電子楽器の可能性を広げる新しい楽器ともいえる。以上をまとめると,電子楽器の特長として,音量の調整が簡単に出来ること,音色を簡単に変化させることが出来ること,録音・再生システムの構成が簡便であること,新しい方式や操作性を有した楽器創成の可能性が高いことなどが挙げられる。1.2 電子楽器の本質とは?そもそも楽器とは何であるか,辞書(大辞林)で調べてみると「音楽を演奏するために用いる器具」とある。さらに今流行のwikipediaでも調べてみると「音楽の素材としての音を発するための道具の総称」や「音楽に使用される音を出す器具」と載っている。いずれも楽器についての説明は,ほぼ同一であることがわかる。しかしながら,本質の理解のためには,もう少し掘り下げたい。図1に楽器のシステム図を示す。図1よりシステムの中身をピアノ(もしくは他の1.1 最近の電子楽器事情とその特徴1919年,ロシアのレフ・セルゲーエヴィチ・テルミン博士が世界初の電子楽器「テルミン」を発明した。1960年代になるとアナログシンセサイザが普及し始めた。これは発振器から作られた正弦波状の波形を変形したり,音量をコントロールしたり,複数の波形を重ね合わしたりする機能を有したものであった。1980年代になるとディジタルシンセサイザが普及し,今や電子楽器は音楽には無くてはならないものになっている。近年,電子回路技術や,筐体設計・成形技術などのさらなる発展・一般化により,様々な電子楽器が次々と市販されるようになった[1-6]。以降に代表的なものを列記する。管楽器を電子楽器化したAKAI社製の「EWI(Electronic Wind Instrument)」[1]や,パーカッションや打楽器を電子楽器化したKORG社製の「WAVEDRUM」[2],アコーディオンを電子楽器化したROLAND社製の「V-Accordion」[3],さらにチェロを電子楽器化したYAMAHA社製の「サイレントチェロ」[4]や「サイレントバイオリン」[5]などは,元の楽器の演奏感とほぼ同一の動作で楽器演奏が可能である。これらはいずれも電子楽器であるゆえに,ヘッドホンから出音して静かに演奏・練習でき,簡単に音量の調整が可能である。さらに簡単に楽器の音色を変えられること,言い換えれば,元の楽器とは違う音を出せるという機能も有している。これらはアコースティック楽器(電気的な増幅1.はじめに〜「無弦チェロ」の開発〜マイコンを用いた電子楽器開発記①

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