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講演のようす約を結び職業訓練を受ける一方で,大学において規定の学修を行う。それにより学生は,職業訓練を終えた証としての専門労働者の資格と,Bachelorの学位を得て修了する。もう一つは,大学の学修の中で,通常の課程よりも50%多い実習を企業等で行い,Bachelorの学位を得るものである。いずれの形であっても,二元制学修の最後には修了論文を書き,修了試験を受けてBachelorの学位を手にする点は共通している。二元制学修は,高等教育需要の高まりと専門労働者の育成の双方に対する一つの試みといえるかもしれない。講演のまとめとして,ドイツと日本において次のような共通の課題が示された。●少子高齢化●高等教育の拡大に伴う多様な学生層●経済のグローバル化により人の移動や高度な専門労働力の育成が必要になる中で,限られた資源で効果的な教育・研究をどのように行うべきか●専門的な労働力をどのように育成していくか,もはやデュアルシステム,中等教育のレベルだけでは十分ではないというときに,大学がどのように専門教育,専門職業教育に関わっていくことができるか〈以下,職業大フォーラム事務局〉本稿では吉川教授のご講演を,ドイツの社会情勢を踏まえたうえで,デュアルシステムと高等職業教育の現状を中心にまとめた。ドイツでは若者が職を得るためには必ず職業教育を受けなければならないという意識が非常にはっきりしている。中学校に相当する課程を卒業する前の段階で,職業というものを明確に意識させ,早い者は卒業とともに職業訓練の道を選ぶ。ここで特徴的なのは,就職の道を選んだ者でも,職人として成長しマイスターの称号を得たのちにアカデミックな教育を受ける機会が与えられていることであった。職人的な技能を重んじるイ-48-メージの強かったドイツにおいても,もはや技能的な能力のみでは生き延びることができなくなってきていることは想像に難くないが,制度として学術的な教育を受け直す仕組みが用意されていることが印象的だった。日本は大学全入時代にあってG型大学・L型大学のようなある意味逆の議論もあるが,自立した社会人を少しでも多く育てたいという方向性は同じであろう。最後に,ご多用の中,今回の基調講演を快くお引き受けいただき,丁寧にわかりやすくご講義いただきました吉川教授に心よりお礼を申し上げます。7.おわりに

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