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るならば,基幹学校修了証(と同等の修了証)が出される。このように,ドイツの学校制度は一見すると複雑な様相を呈しているが,修了資格は3種類の教育資格(基幹学校修了証,実科学校修了証,アビトゥーア)に全国で統一されている。それは中等教育のどの段階を達成したかをあらわす証明書であり,在学した学校種と修了時に手にする教育資格とが必ずしも一致しているとはかぎらない。一方,それぞれの教育資格は,どの学校種で取得したものであれ,ひとしく次の段階に進む証書として通用する。4.2 後期中等教育ドイツの中等教育段階で,大学進学に向けての準備教育を行う機関はギムナジウム(Gymnasium)である。ギムナジウムの10学年を終えた生徒の大半はその上の段階であるギムナジウム上級段階に進み,アビトゥーア(Abitur 一般大学入学資格)試験を受けて修了する。こうして取得されるアビトゥーアは,大学に入学するための資格に該当する。伝統的にドイツでは,アビトゥーアを手にした者はいずれかの大学に学籍を得る権利を有し,個々の大学は入学者の選抜を行わない。適性を判断するために面接試験や入学制限を実施することもあるが,待機期間を経て学籍を得る可能性が残されている。基幹学校と実科学校を終えた生徒の多くは修了後に職業教育訓練を受けるが,ギムナジウム上級段階を終えてアビトゥーアを取得しながら大学に進学せず,職業教育訓練を受ける者もいる。ドイツの教育の大きな特色の一つに,職業学校就学義務がある。前期中等教育までの9年間は日本と同じように普通教育の義務教育期間であるが,その後に職業学校就学義務が続き,18歳になるまで,ギムナジウム上級段階あるいは全日制のいずれかの学校に通っていない者は,職業学校に通わなければならない。これは,職業教育訓練を受け,その修了証書を手にして初めて職業に就く資格が得られることと関係している。実科学校あるいは基幹学校を出た後に専門上級学校へと進み,専門大学入学資格を取得してさらに高-43-等教育に進学する道も開かれている。専門大学入学資格は,後述する専門大学に進学するための資格であり,これに対してアビトゥーア(一般大学入学資格)取得者は,大学と専門大学のどちらにも進むことができる。4.3 デュアルシステムの職業教育訓練ドイツでは自動車整備工,電気工,製パン職人や煙突掃除夫などといった実技的な職種にとどまらず,銀行員や保険を扱うような事務職種に就くためにも職業訓練を受けなければならない。ドイツのデュアルシステムの特徴を簡潔に述べれば,企業内で訓練を受けながら,週に1回か2回,職業学校に通って,基礎となる理論的な学習を行う仕組みである。理論と実践を組み合わせた形で,1つの職業に向けて若者を養成していく。2015年現在,連邦職業教育法に328の職業訓練職種が認められている。訓練職種には新しいものが加わったり,変更されたりするが,この法律に定められた職種でなければ職業訓練を受けることができない。これは未成年者を保護するための基礎となっている。この連邦職業教育法をはじめとして,手工業規則,年少者労働保護法,職業教育訓練指導者適性規則,労働時間規則,母性保護法などの下に,企業内での職業訓練が行われる。一方,職業学校は個々の州の管轄下に置かれ,州の学校法に基づいて教育が行われる。ただし,ドイツ全土で統一性を図るために,常設各州文部大臣会議においても決議等を出し,州ごとにカリキュラムに大きな相違がないように配慮されている。こうした法的基盤に支えられて,実践的な企業内職業訓練と職業学校での理論的学習の双方が組み合されている。デュアルシステムの職業訓練を受けるために,まず前提となるのは見習い訓練生(Auszubildende 職業訓練生とも訳される)になることである。328の職業訓練職種の中には多様な職種が含まれているため,選択肢の幅は非常に広いが,まずは企業等が見習い訓練生を募集する。企業だけではなく手工業者,あるいは大学や公的機関も職種に応じて見習い訓練生の募集を行っている。そうした訓練場所に前

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