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図1 ドイツの教育制度(吉川教授講演資料より)などの面できわめて多様性に富み,教育に関しては各州が権限を有する。各州政府に文部行政をつかさどる省と大臣が置かれ,州ごとに教育に関する法律が定められ,学校制度も一様ではない。教育に関して連邦は限られた領域で権限を与えられているにすぎない。しかし,各州の教育制度があまりにも多様であるならば,ドイツ国民の職業の選択の自由や,居住・移転の自由が保障されないことになりかねない。そのための調整機関として,各州の文部大臣が一堂に会して協議する,常設各州文部大臣会議が設置されている。4.1 初等・前期中等教育個々の州の独自性を尊重しつつ,協調を図りながら国として統一性を確保しているのがドイツの教育制度である。図1にドイツの教育制度を図示する。まず初等教育(日本の小学校に相当する)は,基礎学校(Grundschule)で行われ,多くの州では4年制である。一部の州では6年制をとっているところもある。ドイツでは,日本の高校に相当する段階-42-まで学年を通算して,基礎学校から後述するギムナジウムの上級段階まで,1学年,2学年…13学年というように呼称する。前期中等教育(日本の中学校に相当する)には3つの種類の学校があり,日本と大きく異なっている。基幹学校(Hauptschule:5学年から9学年),実科学校(Realschule:5学年から9ないし10学年),ギムナジウム(Gymnasium:5学年から9ないし10学年)であり,さらには,この3つの学校種を合わせた形の総合制学校(Gesamtschule)があり,また,ドイツ統一後に東側の多くの州には,基幹学校と実科学校を合わせた形の学校が設けられている。以上のように,中等教育段階には異なる種類の学校があり,その種類は州によってさまざまである。その一方で,学校を修了するときに生徒が手にする修了証は,学校の種類にかかわらず統一されている。たとえば,基幹学校を修了した者には基幹学校修了証(Hauptschulabschluss)が,実科学校の修了者には実科学校修了証(Realschulabschluss, 中等教育修了証 Mittlere Reifeとも呼ばれる)が付与されるが,実科学校の生徒が修了に至らず,しかし基幹学校修了と同等の水準に達していると判断され4.大学までの教育

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