1/2017
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図5 金属管加工の育成図6 作業台及び作業器工具一式に取り掛かった。始めは技能五輪の大会を録画した教材を使用し,競技大会のイメージをつかむことにした。次に平成26年に行われた第1回電気工事技能競技全国大会の課題を練習教材として必要工具の選定,治工具の作製をした。同時に選手へのデモンストレーションを行うために,筆者自らの技能・技術の向上も行っていった。2月は全て金属管加工の育成期間とした。山田選手は金属管工事の経験がないため,曲げ始めの位置や力加減の基礎を徹底して指導した。この短期間で山田選手は「R曲げ」「S曲げ」を習得できた。図5に金属管加工時の育成風景を示す。3月には作業を録画し,山田選手が自分では気づいていない癖や不安全行動を確認した。この手法は,自分で自らの行動を確認し,改善点を考えさせ,主体性が養われることを期待した。結果,この頃から自分で練習したい作業を相談してくるようになった。4月には競技時間を気にするようにタイムを計測し,大会に向けての準備を行った。5月下旬に第2回電気工事技能競技全国大会の課題が公表され,第1回の課題と大幅に異なり,指導カリキュラムを変更することにした。特に,金属管加工の変更点が大きく,山田選手は外径が違う金属管を並行にR曲げすることに苦戦した。今まで体に覚えさせた力加減では正確に曲げることができないため,膝を中心として新たな力加減を体に覚えさせるように指導した。6月には競技大会専用にパイプベンダ,工具,材料等が収納できる作業台を作製した。-32-図6に作業台及び作業器工具一式を示す。7月からは競技時間の計測と大会での緊張感に慣れるために当施設の訓練生に協力してもらい,見学者に作業を見られながらでも平常心を保つ練習を行った。大会2ヶ月前のこの時期での完成時間は230分であった。8月に入り,いよいよ緊張感が出てきた。連休で練習ができない日々が続き,金属管を曲げる感覚がずれてきてしまった時期もあったが,8月の後半には標準時間180分の課題に対し,165分で仕上げるまでに到達していた。この時期での改善点は2つある。一つ目は「作業順序の変更」である。今までは苦手意識のある金属管加工から始めていたが,後回しにした方が早くなることが分かった。理由は簡単で,苦手意識があるために,金属管加工から取り掛かると丁寧にやりすぎてしまうからである。二つ目は「段取りの確認」である。録画してあるビデオで確認してみると,手が止まって考えている時間が多くあることに気付いた。言葉に出しながら課題の流れを確認するだけで,手が止まってしまう時間がほとんどなくなった。大会月である9月には技能・技術面よりも精神面を鍛えるようにした。緊張を完全に取り除くことは難しいため,緊張に慣れることを念頭に育成方法を検討した。訓練生や函電協の事務局といった顔なじみの人たちの前ではすでに慣れてしまっているので,函電協の役職員に見学してもらうことを事務局に提案した。その結果,函電協傘下企業の経営者10名程度の参加をいただき,壮行会という形で披露す

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