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図1 実験回路基板近畿職業能力開発大学校 望月 隆生ディジタル回路基板上の無対策な配線では,反射と呼ばれる現象が発生して配線に流れる信号に乱れが生じる。信号の乱れは極短時間であるため,学校で作成するような回路では影響が無いが,高性能なディジタル機器やコンピュータに使用されているような高速ディジタル回路では,動作を狂わす原因となる。この信号の乱れの程度を信号品質と呼び,信号品質を低下させない技術は,今日のコンピュータやディジタル家電等の設計において必須である。しかし,信号品質が動作に影響するほどの高速ディジタル回路は,学校の実習環境で実験を行うことが困難である。これは,高速ディジタル回路の信号帯域が高く,実験が容易でないためである。その結果,従来の実習では,部品や配線の変更によって回路内の信号波形に変化が認められてもディジタル回路としての動作(回路の出力)には影響が無く,信号品質に関する技術の必要性と対策の有効性が実感しにくいという問題があった。この問題を踏まえ,信号品質を低下させる要因と対策技術の有効性の理解を目的として本教材を開発した。本教材は,信号品質の悪化による回路の誤動作と,対策技術による回路動作の正常化が学校の実習環境で確認することが可能である。本教材の実験回路は回路基板にケーブルを接続し,ケーブル端の反射を利用して信号品質を低下させる。さらに信号品質が低下すると通常と異なる信号を出力するよう-11-に回路を設計してあるため,回路の正常動作と誤動作を明確に判別することができる。2.1 教材の構成教材は実験回路,実習の手引き,実験回路図で構成される。それぞれの概要を以下に述べる。(1)実験回路教材で使用する実験回路を図1に示す。回路基板はサイズが50mm×70mmの片面基板であり,信号の流れがイメージしやすいように配線と主な部品が基板の表面になるようにしている。基板は基板加工機で製造しているが,エッチングや外注で製造しても問題はない。基板加工機で製造する場合,加工時間の長さが問題になるが,小型の片面基板であるため短時間で製造することが可能である。実験回路の内部では,図2に示したように入力信1.はじめに2.教材の概要平成28年度 職業訓練教材コンクール 厚生労働大臣賞(特選)受賞作品高速化するディジタル回路における信号品質を理解するための実習教材の開発

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