4/2016
9/52

図3 中枢神経系の測定結果例[10]図4 自律神経系,中枢神経系の各種センサと無線計測・送信装置を腰部に装着した作業中の被験者の一例図5 アイマークレコーダ映像の一例各種の自律神経系の生体信号の時間変化の測定例である[10]。加工作業を行った期間を点線で区切り,「加工中」と表示した。加工作業の前後各5分間は安静状態とした。同じ加工作業を2回(「1回目」,「2回目」と表示),10分の間隔をおいて実施した。生体信号は,上から,皮膚コンダクタンス,心拍変動,LF/HFである。LF/HFを除き,作業前5分間の時間平均値で正規化した。この例で中級者と熟練者を比較すると,加工中の皮膚コンダクタンスは中級者の方が変化が大きいことから,中級者は熟練者よりも作業中の精神的動揺・情動が大きいと考えることができる。加工中のLF/HFも中級者の変化の方が大きい。総合すると,中級者は熟練者よりも作業中の交感神経活動が高い傾向がみられた。図2の測定と同時に行ったアンケート調査による主観評価では,中級者は「加工中に違和感があった」-7-のポイントが高く,熟練者は「作業を楽に感じた」のポイントが高かった。以上の結果を図1の3階層モデルにあてはめると,熟練者はスキルベース行動寄り,中級者は知識ベース行動寄りで作業をしたと考えることができる。ただし,被験者数が少なく,統計学的有意差は示されなかった。4.3 中枢神経系の評価図3[10]は,HEG値について図2と同様に示したものである。加工中のHEG値は中級者の方が熟練者よりも大きく,熟練者4名(職業大教員),中級者5名のt検定では,有意水準10%で統計的有意差が示された。この結果は,熟練者が中級者よりも加工中の前頭前野の脳血流量変化が小さく,3階層モデルにあてはめると,熟練者はスキルベース行動寄り,中級者は知識ベース行動寄りで作業したと考えられる。作業内容の難易度をみると,熟練者3名(技能五輪経験者)の作業内容とHEG値をみたとき,荒加工時より中・仕上げ加工時の方がHEG値が大きい傾向があった。このことから,難易度が低い作業ほど,3階層モデルにおいてスキルベース行動寄りで作業している可能性が考えられる。中枢神経系の測定は,自律神経系の測定と同時に行っている。図4は,各種センサを装着した作業中の被験者の様子である。センサ類からのコードの取り回しには,フライス作業の支障とならないように配慮した。

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る