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図1 フライス加工作業の3階層モデル[8][10]図2 自律神経系の測定結果例[10]るために,MAC3Dsystem(ナックイメージテクノロジー製)を用いてモーションキャプチャを行った。MAC3Dは赤外線方式で,被験者には作業着の上から反射マーカーを関節部分などに装着し,マーカーの三次元座標から,三次元動作分析を行った。(5)アンケート調査これまで述べた(1)〜(4)の事項は,すべて客観的なものである。しかし実験対象が人間の場合,客観的評価だけでなく,主観的評価も必要だ。比較実験では,作業終了後に,作業中の感覚(視覚,嗅覚,聴覚,ハンドルの重さ感覚)に対する意識の度合い,緊張度,難易度,頭を働かせた作業内容などのアンケートを実施し,被験者の主観を評価した。聴覚実験では,作業中の切削音に対する正常/異常の主観的判断に対する水準判断アンケートを実施し,被験者の感性基準を定量的に評価した。4.1 フライス加工作業の3階層モデルフライス加工作業を身体性認知科学で検討するために,ラスムッセンのモデルをもとにしたフライス加工作業の3階層モデルを作成した(図1)[8][10]。各階層の行動は,次のように解釈できる。技能レベルの高くない中級者あるいは入門者や,熟練者であっても不慣れな作業を行う場合は,簡単な作業でも確認や判断,動作の計画を行うと考えられる。このような行動が,知識ベース行動である。一方,熟練者が慣れた作業を行う場合は,五感で感じた状況-6-(環境)に対して条件反射的に適切な対応動作を行うと考えられる。これがスキルベース行動である。知識ベース行動とスキルベース行動の中間に位置するルールベース行動では,すでに記憶された行動の手順にしたがって行動する。我々の3階層モデルの特徴は,神経系の活動傾向を追加したことである。行動の階層が知識ベース行動に向かうにしたがって,作業者はより多くのことを考え,確認・同定し,判断することになるため,自律神経系としての緊張度,中枢神経系としての前頭前野の脳活動が高まることを予想できる。この予想については,次で述べる比較実験の各種結果により評価する。4.2 自律神経系の評価図2は,中級者(左側)と熟練者(右側)について,4.研究成果

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