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て,調査条件を確認しながら,最終的な了解を得る事が出来た。民家調査の場合には,施設からの協力依頼の文書を出すと言う条件付きで許可されて,図面資料の入手,現地での調査実測なども条件付きで許可された。次に,3.のテーマに関連する文献検索であるが,これは必ず実施する必要がある。調査や研究は,オリジナリティーが求められる。今までの調査例に理解を示すと共に,新たな知見を得るべく,良く考え抜かれた方法で,対象と向き合う必要がある。実測調査に関する事前の文献検索の意義は,①既に行われている内容の調査は追試の意味に留まる事。②出来れば,オリジナリティーを求めたい。③文献を読む事は,参加する実習生にとっても勉強になり,readiness向上となる。④全体の組み立て方を参考にし,最後の小論文作成に活かせる。⑤参考文献としても役立つ。そして,4.の調査対象を絞る。これは栃木の蔵造での話であるが,美術館は空調設備の条件から,我々が望む空調なしでの測定が難しいとの回答があった。もう一つの郷土資料館の方は,空調を一時的に止める事も出来るとの事で,こちらを調査させて頂いた。調査に際しては,先方との約束は必ず守る事。互いの信頼関係を保つ事が大切である。調査は,色々な条件がある中での行為なので,こうした付帯条件が付いて回る。次に,5.の力量の点であるが,専門課程の学生さんの場合に,このreadiness状態が整っていない,或いは不充分である事が考えられる。その場合には,こちらでフォローする事や,途中で補足の勉強会を追加する事も有効な手立ての一つで有る。実測調査の内容や調査レベルは,飽く迄も参加者の力量に適した内容に設定する。調査は,ある意味で時間との勝負でもある。大切な事は,受講生が興味を持って取り組み,自らの能力を開発出来たと実感できる事にある。6.のキーマン探しが大切なポイントの一つである。行政庁の文化課の担当者などとの打ち合わせを重ねて,調査する事の意義を伝え,協力依頼へと繋げて行く。下準備が済んで,実際的に取り組むこと-38-が可能であると見通せた時点で,所属する施設の施設長から,先方の行政庁の担当課宛てに,協力依頼書を発行する事となる。これは最後まで安全に調査が実施されるためにも,必要な手続きの一つである。7.は,実際の段取りに入った段階であり,調査後の成果物を見通しておく必要がある。これは最後のまとめの段階で,欠損データや確認漏れが出ないためにも必要な確認ポイントである。成果物としては,図面・写真・計測データ・小論文などが考えられる。そして,その結果から一つの知見を得る事。必要な道具としては,スケール・カメラ・データロガー・計測機器・ノートパソコン等がある。必要に応じて,治具などを自ら造り出す事もある。そして時間管理のための工程表を作成し,その工程管理や進度管理を行う。8.が調査の実施である。その項目ごとにその特性を見究めるのに必要な条件設定がある(項目ごとの調査条件をはずさない様に留意する)。物性を調べるには,一番過酷な条件下で調べるのが,一つの有効な方法である。例えば,建物の保有する温熱環境に関する特性を見極めるには,一番暑い夏の酷暑の条件下と一番寒い冬の極寒の条件下の中で調査する事が設定される。或いは補足的に,同じ厳しい条件下でのシミュレーションソフトを使った数値なども参考になる。9.は調査後のデータのまとめであるが,これは出先での調査方法がよく考えられて準備していれば,帰って来てからのデータ入力やまとめはスムーズに行われる。現地の調査データを帳票にしてまとめておく事やノートパソコンを持参し,現地でそこに入力しながら調査を進める方法もある。次に,データロガーで集めたデータの集計とグラフ作成等,データの特性を捉える。ここで注意しなければならない事は,特に遠方への出張調査の時や一回だけの実測調査するチャンスの時などに,設定の不具合から,すべてのデータを不揃いにする訳には行かない。それ故に,現地での調査開始時点で,データ記録が出来ている事の確認は必要である。10.の成果物に関しては,事前の打ち合わせによる調査の実施であり,途中での変更は難しいが,項

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