4/2016
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写真5 トーチと握りうに差す方法などが考えられた。最終的には,取付位置の調整幅が大きくとれる,マジックテープで張り付ける方法にした。手の甲側のマジックテープは皮手袋の上からはめられるサポータにセンサーを取り付ける方式とした。写真3にセンサー部,写真4に装着サポータを示す。サポータは左右兼用できるので,溶接棒を使い両手を使用して作業するとき,左手の動きを観測したいときも簡単に付け替えが可能である。(2)ノイズ対策溶接時のノイズ対策として,次のことに配慮した。①伝導性ノイズパソコンの電源は商用電源から分離,バッテリー駆動にする。②電磁誘導ノイズジャイロセンサーとマイコンボード間の配線ジャンプワイヤはバラの線ではなくケーブルを使用し,さらにケーブルにはフェライトビーズを入れた。以上のノイズ対策を実施したが,TIG溶接におけるスタート時にパソコン自体が影響を受けてプログラムが停止した。アークが安定した状態では観測可能であることから,TIG溶接のアーク発生させるための高周波放電開始時のサージ電圧が原因していると推測される。評価実験のファーストステップとしては,実際にアークを飛ばさずに模擬してトーチを動かしたときの手の動きを調べることにした。4-1 TIG溶接の特徴TIG溶接はタングステンを電極に使用して,溶接する母材との間にアーク発生させアルゴンガスなどの不活性ガスで保護しながら溶接する。このため安定したアークがえられ,溶接棒とアーク熱源による母材の溶融と溶接棒の溶融が切り離されて行われるため薄板から厚板まで,必要な溶け込みを確実に得ることができる。さらに,不活性ガスでシールしながら溶接するの-33-で溶融金属の成分変化が少ない高品質の溶接が得やすいことから材料としては炭素鋼からステンレスなどの合金からアルミやマグネシウムなど航空宇宙関連機器など最先端技術に使用されている材料の溶接に適する。4-2 溶接作業者の技量溶接棒を使用する場合,溶接池を作り必要な大きさにした後,溶接棒を溶接池で溶かす。これを繰り返しながら溶接を進めていく。トーチの傾きと電極と母材の距離を一定に保ち,溶接棒を差していく両手での作業では,技量の差が溶接の仕上がりに影響する。また,T継ぎ手の溶接は8の字を描くようにトーチをローリングしつつ前進させて,母材を均等に溶融させながら溶接する必要があり,手首を滑らかに円運動させるには熟練が必要である。4-3 評価試験と結果TIG溶接のトーチと握りを写真5に示す。予備調査の結果,水平下向き溶接では手の甲のx,y軸角度のぶれはきわめて小さいことが分かった。さらに,T継ぎ手の場合はピッチ角とローリング角だけではうまく差異が観測できなかった。4.溶接作業と評価試験

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