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<参考文献>性についての評価は今後の課題となりますが「新モノづくり」と「バイオミミクリー」とのコラボレーションという前例のない取り組み(実践)に挑戦できた,と試作に関わった学生共々認識しています。「Bio-Star」は環境を汚染しない事,防水機能,潤滑性に優れていることから大変使い易い軸受けでした。同様の機構を従来のモノづくり手法で製作した場合では水没する推進機構の防水を満たす事が難しかったと推測しています。バイオミミクリーやネイチャーテクノロジーから生まれた革新技術は,気づかないうち私達の生活の中に取り入れられ,省エネルギーや省資源また利便性の向上に寄与しています。しかし,「模倣」するにしても「リ・デザイン」するにしても近代科学の進歩や伝承されてきた技能や技術があったからこそ実現できた製品や技術であることを認識しておかなければなりません。平成26年に経済産業省から出された「新モノづくり研究会」の報告書を見ると3Dプリンタをはじめとする付加製造技術は大きく二つの方向への発展をするだろうと示されています。その一つは精密な工作機械としての発展可能性と今一つは個人も含めた幅広い主体のモノづくりツールとしての可能性です。前者では設計・試作工程の短縮や削り加工に比べて材料の無駄が出ない等といったモノづくりのプロセスの革新があげられ,後者にはアイデアの実体化や即興性に着目した発想段階における活用,ネットワークとの相性が良い事からソーシャルメディアの発展などと相まってオープンな環境での新たのモノづくりの可能性を示唆しています。つまり,個人による自由なモノづくりの可能性を拡げるFabLab(fabrication laboratory)注1)と言われる工作機械を備えたワークショップの普及です。このようにモノづくりが大きく変革する時期をむかえる中で,モノづくりやモノづくりが出来る人材を育成する我々職業訓練指導員は何をすべきか?自-23-1)滋賀経済同友会「新モノづくり」研究会資料(2013.5)2)滋賀職業能力開発短期大学校紀要 第18号「脱着式水陸両用自転車の設計・製作」 戸田将弘3)MAKER-21世紀の産業革命が始まる。NHK出版4)熊本大学大学院中西研究室「Bio-Star」滋賀職業能力開発短期大学校向け資料5)「新モノづくり研究会」報告書経済産業省(2014.2.21)6)バイオミミクリー研究所「ガイドブック」注1)Fab Lab: デジタルからアナログまでの多様な工作機械を備分に問いかけてみました。デジタル技術によるモノづくりが人の手によるモノづくりと融合すればそれは産業革命であり,第3次産業革命は今起こりつつあるといわれています。FabLabは,その例でモノづくりは大企業でなくともできるようになり,モノづくりの考え方自体将来的には大きく変わってきます。しかし,このような中においても「人の手によるモノづくり」があり,職業訓練を受けた人の多くはそこに関わるのであろうと私は思っています。モノづくりは地球に対して環境負荷をかけていることは間違いない事実です。今,革新技術と言われるものの多くは地球上に住む生物の長い進化の過程で生まれてきた知恵や仕組みから学んだものです。ですからモノづくりを教える我々は,今日まで継承されてきた技術や技能と共に「地球環境や生物」そして「バイオミミクリー・ネイチャーテクノロジー」といった自然に学び自然を活かす考え方や技術を学べる教科や実験課題をカリキュラムの中に加え,少しでも環境に負荷をかけない「モノづくり」の手法を考えて実践できる人材の育成を目指す必要であると考えます。そしてこの事が21世紀の職業訓練を担当する我々の使命の一つであるような気がしています。えた,実験的な市民工房のネットワーク。6.おわりに

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