4/2016
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(a)図12 造形したスクリュ図14 軽快に航行するレンタサイクル図13 推進機構(b)図12は17時間を要して造形したスクリュです。図からも判るようにスクリュの羽根が厚く造形されています。これでは十分な推進力が得られません。この様な形状になる事は,当初から判っていたのですが,3Dプリンタで実用部品を製作した経験が無かったことから物性値の許容応力の限界まで薄くすることは危険であると判断したからです。また,造形精度についてもZ軸は0.25mmの積層ピッチとなり,切削加工に比べて精度が荒い事,熱による収縮,重力によるダレ,積層の為荷重のかかる方向で強度が変わるなどの問題点が推測されたことから,造形後のスクリュの様子を見ながらリュータ等を用いた手仕上げによる調整を行って形状を詰めていこうと考えていました。3Dプリンタによる初めての実用品の製作でしたが,製作を通して強度の方向性,形状の収縮予測等の解析技術の必要性を強く感じており,今後の技術進歩に期待したいと思っています。今回の試作では当校に3Dスキャナが配置されていないため採用できませんでしたが,造形については最適形状のスクリュを3Dスキャナ(非接触式)で計測してデジタルデータ化し,そのデータを3Dプリンタに入力するというリバースエンジニアリング手法を用いる方が有効であったと考えています。次に推進機構の製作です。図13の(a)ように推進力はタイヤ①に押し付けたローラー②からタイヤの回転力を動力として取り出し,チエーンを介してすぐばかさ歯車③を回転させています。この回転力はカップリングでつないだ軸によって垂直に伝わ-22-り,水中にあるギアボックスを経由してスクリュが回転する機構となっています。図13(b)は,ギアボックスと2組の「Bio-Star」で構成したスクリュ回転機構です。ここでは「Bio-Star」がベアリング機能と共に水中にあるギアボックス内への水の浸入を防ぐ役割も担っています。また,図13(b)中の潤滑油タンクには補給用の潤滑液であるヒアルロン酸が入っています。実験は,近江八幡市の水郷「西の湖」においてアスクネイチャージャパン関係者やマスコミ関係者が見守る中で行いました。レンタサイクルを搭載したフロート部は通常の自転車をこぐ程度の強さで約3ノットの速度が得られ水面を滑らかに航行する事ができました。図14は学生が操舵して航行する試作機です。自転車の後輪とスクリュとの増速比やスクリュの形状,寸法などの最適化を行えば数ノット以上での航行が可能であると考えています。また,試作した推進機構の耐久性やメンテナンス5.フロート部の航行実験

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